ロゼッタと交わした会話から何かを読み取ったバラゴナはにわかに表情を険しくし、さらなる森の深部へとグラン一行を案内する。
ロゼッタ
――そうだ、ねぇ、騎士様。
アタシ達、黒騎士を探してるんだけど
どこに居るか知らないかしら?
バラゴナ
さぁ……気難しい方ですからね。
どこに居るのやら……
ロゼッタ
あら本当に?
だって騎士様……
さっき会ってたでしょう? 黒騎士に。
バラゴナ
……ご婦人、
何を知っておられるのかな?
返答次第では……!!
ビィ
お、おい!
いつの間にか
なんか険悪なことになってんぞ!?
カタリナ
ロゼッタのあの様子……
何か思惑があるようだが……
彼女は本当に何者なんだ……?
ロゼッタ
残念だけど、
この森の中のことで
アタシが知らないことは何もないの。
ロゼッタ
それに怖い顔しないで頂戴。
アタシはただの案内人。
ロゼッタ
ちゃんと連れてきたんだから、
貴方も貴方で、
しっかり役目を果たしなさいな。
バラゴナ
案内人……
……そうか。
では、ええと……君がルリアかな?
ルリア
ふぇっ!?
は、はい、そうですけど……
バラゴナ
ふむ……
では、その隣に居る君が……
バラゴナ
そうか……
雰囲気が父君に似ているな……
やはり血筋か……
ビィ
まさか……グランの親父さんを、
知ってるってのか!?
バラゴナ
……わかりました。
そういうことなら、案内しましょう。
私に付いて来てください。
ビィ
あ! おい!
ロゼッタ
ふふ……行きましょう?
せっかく
案内してくれるって言うんだもの。
カタリナ
彼の後を追おう、グラン
いまの私達には恐らく、それが最善だ。
バラゴナは自らが案内した森の深奥でグラン一行に刃を向ける。しかし、敵対の意思はなくグラン
を試すためだと話すバラゴナに、一同は胸を借りる思いで応戦する。
バラゴナ
着きましたよ。
ここです……
イオ
ここって言われても……
オイゲン
騎士さんよぉ……
道を間違えちゃいねぇか?
ここにゃオレ達以外に誰もいねぇぜ?
バラゴナ
被害を出すわけにもいきませんから……
さぁ、武器を構えなさい。
カタリナ
どういうことだ……?
やはり帝国の騎士として我々を?
バラゴナ
帝国は関係ありません。
これは私の……
この世界の最強を背負う者の使命です。
バラゴナ
グラン、
君がルリアちゃんを連れている以上、
私は君達を試さなくてはならない。
バラゴナ
どうぞ……遠慮は無用です。
全力でかかってきてください。
ラカム
全力って……
んなことしたら、どうなるか……
バラゴナ
ご安心を。私は強いですから。
それこそ貴方達が
足元にも及ばないほどに……
イオ
そ、そこまで言われると、
ちょっとカチンとくるわ……
ルリア
ど、どうするの? グラン
選択肢
全力でやろう
ビィ
あそこまで言われちゃあな!
オイラ達だって、
星晶獣を相手に戦ったりしてきたんだ!
ビィ
見せてやろうぜ!
オイラ達の底力ってやつをな!
カタリナ
またとない機会だ……
この空の頂に立つ武人に、
全力で挑んでみようじゃないか!!
オルキス
…………
ロゼッタ
グラン、貴方達は試されてるの。
だからアタシに見せて頂戴……
ロゼッタ
あの日……あの旅立ちに、
ルリアちゃんの手を取った覚悟を、ね。
グランの実力に満足したバラゴナは穏やかな笑みを浮かべて一同の前から去っていく。そして、グラン
のことを気に入ったロゼッタは、グランの旅に付いていくことを勝手に宣言するのだった。
バラゴナ
……!
ロゼッタ
……これは、予想外だわ。
バラゴナ
これはこれは……!
なかなかどうして、大したものだ!
ラカム
あ、あれだけやったのに、
まだピンピンしてるじゃねぇか……!
カタリナ
私達は軽くあしらわれていたようだな。
流石は帝国最強といったところか……
バラゴナ
今日のところは、これで十分です。
欲しかった手応えは、
確かに感じました……
バラゴナ
いつかまた、お会いしましょう。
再会を楽しみにしていますよ。
そう告げた緋色の騎士は、
穏やかな笑みを浮かべて去って行った。
ラカム
――で?
結局、あんたは何者なんだよ?
ロゼッタ
ふふふ……アタシの正体なんて、
知っても面白くないわ。
そんなことより……
ロゼッタ
まさか緋色の騎士を退けるなんて……
アタシ、グラン達のこと、
とっても気に入っちゃったわ!
ラカム
ああ、そりゃどうも……
ロゼッタ
だから、これからは貴方達の旅に、
アタシも付いていくことにしたから。
よろしくね? グラン。
カタリナ
なっ……!?
だ、断固お断りだぞ!
こんな得体の知れない者を……!
ロゼッタ
あら、いいじゃない。
長旅には華も必要でしょ?
イオ
華なら間に合ってますー!
ねー? ルリア。
ルリア
そ、そうです!
……そうですよね? グラン。
ロゼッタ
大人の魅力が足りないって言ってるの。
わかるかしら?
オイゲン
ははは! そういうことなら、
おっさんとしちゃ大歓迎だなぁ、オイ。
カタリナ
くっ……わ、私では、
大人の魅力不足ということか……
ラカム
あーあー
カタリナがショック受けてんぞー
泣いちまうぞ、これは。
カタリナ
ふ、ふざけるなっ!
このくらいのことで誰が泣くものか!
ビィ
……こりゃあ、しばらくの間は、
騎空艇の中が騒がしくなりそーだな。
なぁ、グラン。
オルキス
……にぎやか。