自分達の砦の中で帝国兵から逃げることになってしまったリーシャ、モニカを挑発する黒騎士。しかし、歴戦の勇士であるモニカは黒騎士の挑発を軽くいなし、自分達の信念を高らかに告げる。
モニカ
はぁ……はぁ……
黒騎士
ふん……滑稽なものだな。
自分達の城とも呼べる場所で
逃げ回らねばならんとは。
リーシャ
う、うるさいっ!
黒騎士
一つ提案をしようか?
拘束されている私は、
この状況では、ただのお荷物だ。
モニカ
だから置いて行け……というのか?
ルリア
で、出来ません、そんなこと!
だって、帝国の人達が、
黒騎士さんを探してるのに……
黒騎士
そうか……ルリア、
君はそう言ってくれるか……
ふ……妙に懐かしい心地だ。
ルリア
え?
黒騎士
しかし、
秩序の騎空団の方々はどうかな?
私の罪状を知っているだろう?
黒騎士
あれならば、
秩序の騎空団の上層部も、
私を処刑せよ、と命じるだろう。
黒騎士
幸いエルステ帝国も
そう望んでいるようだ。
黒騎士
ここで私を置いて行けば、
手間が省けるんじゃないか?
リーシャ
っ……!
モニカ
ふん……安い挑発だな。
リーシャ
モニカさん……
モニカ
我々が司るのは秩序だ。
我々はただの騎空団ではない、
秩序の騎空団なのだ。
モニカ
だからこそ、結果が同じだとしても、
絶対に帝国に
お前を殺させるわけにはいかない。
モニカ
命を懸けてお前を守る、
そして裁きを受けさせる。
モニカ
それが、
碧の騎士が掲げた我々の理念だ。
それが揺らぐことなどあり得んよ。
黒騎士
ふん……
さすがにこの程度では
お前は動揺もせんか……
モニカ
無駄口を叩く暇があるのなら、
少しでもお荷物にならんよう動け。
モニカ
さぁ、兵達が来るぞ!
構えるんだ! グラン!
あらかた兵を撒いた一行は、改めて帝国側からの要請にあった黒騎士の罪状を確認する。モニカはその訴えに対し異論があるかどうかを問うが、黒騎士ははっきり答えようとしない。
ザカ大公
うむ……
どうやら兵はあらかた撒いたようじゃな。
カタリナ
ああ……こちらにも姿は無い。
油断は出来ないがな。
リーシャ
こほん……
それでは簡単にですが
状況を整理させて頂きます。
そう告げると、リーシャは
取り出した用紙を読み上げ始める。
リーシャ
先日、私達、秩序の騎空団に
エルステ帝国からの要請があり……
リーシャ
私達は
エルステ帝国最高顧問であった黒騎士、
本名アポロニアを捕縛致しました。
リーシャ
エルステ帝国側からの要請にあった
罪状は大きく分けて、3つ。
リーシャ
まず、
エルステ帝国そのものの乗っ取り、
独裁による苛烈な他島への侵略。
リーシャ
そして、
危険な実験を伴う魔晶の作成……
モニカ
最後に、
その魔晶を粉状にした、
魔物をおびき寄せる粉末……
モニカ
これを秘密裏に流通させ、
市井の治安を著しく悪化させたこと……
この3つだったな。
モニカ
エルステ帝国からの、
これらの訴えに対し、異論はあるか?
黒騎士
さぁ……どうだろうな。
ルリア
黒騎士さん……
イオ
ふん……
これはもう、
認めた、ってことでいいんじゃないの?
ザカ大公
いや……待つんじゃ、イオ。
そう決めるのは、まだ早い。
イオ
師匠!
でも、こいつはバルツを……!
黒騎士
認めてはいるさ……私の敗北をな。
あの女のほうが一枚上手だった、
それは確かに認めよう。
黒騎士
だが、諦めるつもりはない……
私は必ず彼女を……
オルキスを……
帝国兵
見つけたぞ! 黒騎士!
ロゼッタ
あらあら……
こんな状況じゃ、
落ち着いて話も出来ないわね。
ロゼッタ
大事な話をしてるんだから……
空気の読めない悪い子は、
アタシがお仕置きしてあげるわ!