久々の再会を果たしたオイゲンと、その娘黒騎士。
どうにか娘との会話のきっかけを掴みたいオイゲンであったが、
話しかけるたびに黒騎士に冷たく一蹴されてしまう。
オイゲンの家庭の問題であるため、干渉する事もできない一行は、その光景を見守るほかは無かった。
黒騎士
はああぁぁっ!!
秩序の騎空団員
ぐふっ……
く、くそっ……!
黒騎士
大口を叩いていた割に、
秩序の騎空団もこの程度か……
黒騎士
やはりあのチビが相手でないと、
暇潰しにもならん……
オイゲン
な、なぁ、アポロ!
お前、オレの知らねぇうちに、
ずいぶん腕をあげたなぁ!
黒騎士
…………
黒騎士
知らないうち、だと……?
まるで、さも長い間
私の面倒を見ていたような言いぐさだな。
オイゲン
い、いやぁ……
しかし、ホントに立派になったよな!
黒騎士
おかげさまでな……
父親などろくに居なくとも
子は育つという、いい経験になったよ。
オイゲン
うぐっ……
イオ
ね、ねぇ……
オイゲンが
ちょっと可哀想なんだけど……
ラカム
しかし、思いっきり、
よその家庭の事情、
って感じだしなぁ……
ラカム
ちょっと俺達にゃあ
絡みづらい内容だぜ、これは……
カタリナ
誰しも反抗期はあるだろうが、
それにしては少々、
度が過ぎているように思うがな……
ロゼッタ
過去に何かあったのは、
間違いないみたいだけど……
ロゼッタ
それよりいま、おねーさんは、
カタリナの反抗期のほうが、
気になるわぁ……
ルリア
カ、カタリナにも
反抗期ってあったの!?
カタリナ
えっ!?
あ、いや、それはその……
ビィ
カタリナの反抗期かぁ……
ちょっとオイラにゃ
想像出来ねーな!
カタリナ
い、いや、それはまぁ……
多少はそういう時期もあったが、
すぐに収まったというか……
カタリナ
ああもう!
というか、こんな話を
している場合ではないだろう!
カタリナ
今度は帝国兵だ! 迎え撃つぞ!
……って、に、にやにやするなぁっ!
黒騎士は、オルキスの捕えられている場所が、
エルステが帝政に移る前の旧首都である、ラビ島の都市メフォラシュであろうと推測する。
フリーシアが拠点に旧首都を選んだ理由について、何か意図がある事を匂わせる黒騎士だったが──
ラカム
うしっ!
このまま進めばじきに
グランサイファーが見えるはずだぜ。
ラカム
そういや……
グランサイファーに乗り込んだら、
今度はどこに行くんだ?
ラカム
オルキスちゃんの居る場所は、
お前が案内するって言ってたよな?
黒騎士
ああ……
恐らく人形はフリーシアと共に、
ラビ島のメフォラシュに居るはずだ。
カタリナ
メフォラシュ……?
エルステ帝国の首都である、
アガスティアではないのか?
黒騎士
首都さ……
いや、正確には首都だった街、だがな。
黒騎士
メフォラシュというのは、
私がエルステに来る前……
エルステが王国だった時代の首都だ。
イオ
ふぅん……?
でも、どうしてそんな古い街にいるの?
いまの首都は違うんでしょ?
黒騎士
帝国の首都……アガスティアは、
あの女にとっては、
何の意味もない場所だ。
黒騎士
仮初の意味しか持たぬ街に、
奴が自らの拠点を置くとは、
考えがたいからな……
ラカム
それじゃあ、
次はその、
ラビ島を目指せばいいんだな?
黒騎士
そうだ……
ただ、もちろん、
ここを無事に抜けてからの話だがな。
秩序の騎空団員
黒騎士!
貴様、これ以上は進ませんぞ!
黒騎士
敵に情けをかけてやれるほど、
私の心は広くない……
立ち塞がるというのなら、覚悟しろ!
ルリアにだけ親しげな態度を取る黒騎士を見て、ビィが怪訝そうにしていた。
しかし、当のルリア曰く、黒騎士が親しみを抱いているのは、ルリアに対してではなさそうだという。
自分に誰かの面影を重ね合わせているのではないかとルリアは語るのであった。
ビィ
なぁなぁ……
オイラさっきから思ってたんだけど……
ビィ
黒騎士の奴、
ルリアにはなんだか優しいよな。
妙に親しげっつーか……
ルリア
いえ……
黒騎士さんはきっと、
私に優しいわけじゃないです。
ビィ
うん?
でも、明らかに他の連中とは
扱いが違うぜ?
ルリア
でも、黒騎士さんは、
私を見ていないと思います……
ルリア
まるで、私を通して、
誰か別の人に話しかけているような……
そんな感じがするんです。
黒騎士の瞳には、
自らの姿が無いことにルリアは気付く。
しかし、その瞳にある面影は
いったい誰なのか。
その答えは黒騎士のみが知っていた。