街の中に兵がいないことに疑問を持つグラン
達に、黒騎士が理由を語る。帝国はこの島の秘密を守っており、外からの侵入だけでなく島民が外に出ることも阻んでいるのだという。そのことに憤るカタリナへ、黒騎士は自らの決意を語る。
カタリナ
しかし、
本当に街の中では兵を見ないな……
いったい、どういうことなんだ?
カタリナ
魔物も出るというのに、
島に降りてからというもの、
ほとんど兵の姿を見かけない……
カタリナ
本来ならば、
街中に現れた魔物など、
街を守る兵が始末するはずだが……
黒騎士
ここに配備されている兵は、
街を守るために居るわけではない。
黒騎士
街の……住人達を
守ることが目的ではない。
街の秘密を守ることが目的なのだ。
黒騎士
島の周囲を守る戦艦にしてもそうだ。
あれは島への侵入を阻むと同時に、
島から人を出さないためでもある。
ルリア
そんな……
じゃあ、ここの人達は……
黒騎士
島を出ることは出来ない。
エルステ帝国の許可無しにはな。
黒騎士
まぁ……
許可が出た前例など、
少なくとも私は知らんがな。
カタリナ
つまりそれは……
エルステはこの街の住人達を、
見殺しにしているということか……?
黒騎士
…………
黒騎士
そうだな……
言い訳をするつもりはない。
カタリナ
貴様ッ……!
黒騎士
私を非道と罵りたくば、
好きにするといい……
黒騎士
だがな……
私には何を犠牲にしようとも、
成し遂げねばらならぬ望みがあるのだ。
黒騎士
どれだけ大切なものを……
大切な場所を失おうと……
私は必ず成し遂げねばならんのだ……
ルリア
黒騎士さん……?
黒騎士
オルキスのために……
彼女のために進み続ける、
私はそう決めたのだ。
黒騎士
そのためなら何だって捨ててやる。
誇りも、安らぎも、思い出も……
私自身の命さえもな。
重い空気の中、仲間達への謝罪を口にするオイゲン。黒騎士の言動や行動に責任を感じている彼を諌めるロゼッタは、既に黒騎士が親の手を離れ自立した存在であると語るのだった。
黒騎士
…………
カタリナ
…………
ラカム
やれやれ……
アマルティアからこっち、
どうにもピリピリしてんな。
ビィ
だよなぁ……
オイラ、息が詰まっちまいそうだぜ……
イオ
仕方ないじゃない。
だって、あたし達はいま、
あの黒騎士と一緒に居るのよ?
イオ
カタリナは特に、
色々と思うところもあるだろうし……
空気だって重くなっちゃうわよ。
オイゲン
なんつーか、その……
すまねぇな。
ロゼッタ
ふふ……
貴方が謝ることじゃないわ。
あの子は全てを自分で決めたんだから。
オイゲン
いや、しかしなぁ……
こんなんでもオレぁ、
アイツの親だからよ……
ロゼッタ
じゃあ……
あの子のやったこと全ての責任を
貴方が取るって言うの?
ロゼッタ
国を乗っ取り、侵略を進め……
たくさんの人達を犠牲にしてきた。
ロゼッタ
バルツの大公さんが言うように、
黒騎士は直接手を
下してなかったとしても……
ロゼッタ
あの子はそれを見届けてきた。
見殺しにしてきた。
その罪を……貴方に贖えるの?
オイゲン
っ!
そ、それは……
ロゼッタ
ふふ……
意地悪言って、ごめんなさい。
ロゼッタ
でもね?
黒騎士だって、
いつまでも子供じゃないわ。
ロゼッタ
もう立派に……
親の貴方でも面倒が見きれないほど、
たくさんの事を成し遂げてきた。
ロゼッタ
それが悪事であれ善事であれ、
とにかく彼女も、
色々なものを重ねてきたのよ。
オイゲン
…………
ロゼッタ
それを認めてあげて、
その上で父親がすべきことって、
他にあるんじゃない?
オイゲン
オレが……
すべきこと、か……
ラカム
なぁ、ロゼッタ……
つくづく思うんだが、
あんた本当に何者なんだ?
ラカム
もしかして……
オイゲンよりも年上なんじゃねぇのか?
ロゼッタ
女性に歳を尋ねるのは、
無礼だと習わなかったのかしら?
……なんてね。
ロゼッタ
女の魅力は秘密の数だけ増すものよ。
イオちゃんも、
よーく覚えておいてね。
イオ
う、うん……!
ロゼッタ
ふふ……良いお返事。
それじゃあ、行きましょうか。
囚われのお姫様を救いに、ね……