グラン
一行と対峙する黒騎士はオルキスに指示を与え、ついに奥の手を繰り出す。それは、深き森の湖畔で眠る太古の星晶獣ユグドラシルを目覚めさせることだった。
ルリア
――っ!?
こ、この感覚……まさか!?
オルキス
――準備、できた。
黒騎士
そうか……ではさっそく起こせ。
あまり待たせるのも酷というものだ。
オルキス
ん……
ルリア
ま、待って! オルキスちゃん!
だめだよ! 絶対に!
せっかく静かに眠っているのに!!
オルキス
…………
オルキス
――目覚めよ、摂理の陣をまといし、
偉大なる創世樹よ……
ルリア
オルキスちゃんっ!
オルキス
――いまここに顕現し、
星の理を以って、我が敵を滅ぼせ!!
黒騎士
起きろ……星晶獣ユグドラシル。
貴様の力を見せてみろ!!
ユグドラシル
――――
ロゼッタ
せっかく……
せっかく静かに眠っていた子を……!!
黒騎士
ロゼッタ、
力は使われてこそ意味がある……
いい加減、それを理解することだな。
ビィ
ユグドラシルの力に反応して、
魔物が集まってきやがった!
オイゲン
ここまで計算づくってわけかい……
油断のならねぇ奴だな、まったく。
カタリナ
まずはこちらを片付けるのが先決か……
蹴散らすぞ! グラン!
自分達と一緒に居たいという意思を示しながらも黒騎士に付き従うオルキスに、ルリアは悲痛に訴えかける。微かな答えがこぼれたその時、ユグドラシルがグラン
一行へと襲いかかった。
ユグドラシル
――――
ルリア
オルキスちゃん……どうしてこんな……
この子は静かに
時を過ごしていただけなのに……
オルキス
…………
ルリア
ねぇ、どうして……?
答えてよ、オルキスちゃん……
オルキス
…………
ルリア
どうしてオルキスちゃんは
そこに居るの?
私達の手を取らないのは、どうして?
オルキス
…………
ルリア
もう何も聞こえないの……?
オルキスちゃん……!!
オルキス
……――――
ルリア
え……?
黒騎士
悲しいか、ルリア……
すまないな……
しかし、これは必要なことなんだ……
黒騎士
彼女も事あるごとに泣いていた。
しかし、だからこそ、
彼女の笑顔は魅力的だったのだ……
黒騎士
……さぁ、仕上げだ。
悠久を超える創世樹を相手に、
せいぜいあがいてみせるがいい!!
黒騎士にオルキスを連れ去られ意気消沈するグラン
一行の前に、突如としてエルステ帝国の戦艦が現れる。戦艦から降りてきた兵士はグランに、エルステ帝国は一行との和解を望んでいることを告げる。
ルリア
――ユグドラシル、
もうこれで大丈夫だよ、
うん、だから……おやすみ。
ユグドラシル
────
ラカム
なんとかデカいのは片付けた、が……
カタリナ
黒騎士とオルキスは
影も形もないな……
ロゼッタ
いまごろはもう
騎空艇も飛び立った頃かしらね……
イオ
あーもー!
くやしいー!
ビィ
まったくだぜ!
もうちょっとだったってのに……
オイゲン
結局、オルキス嬢ちゃんには、
届かなかったんだなぁ……
ルリア
……いいえ、オルキスちゃんに
私達の気持ちは
ちゃんと届いていました……
ルリア
だから……
ごめんね、って……
そう言ってました、オルキスちゃん……
カタリナ
ごめんね、か……
ラカム
謝る必要なんざねぇっつのに……
ラカム
……って、おい、なんだあれ!
あれ、帝国の戦艦じゃねぇのか!?
突如として上空に現れた
エルステ帝国の戦艦に
一同は身を固くする。
しかし、戦艦から
降り立った使者は、
意外な提案を述べた。
カタリナ
わ、和解をしたいだと……?
帝国兵
そうだ……我らがエルステ帝国は、
貴様らと和解することを
希望している。
オイゲン
お、おいおいおい……
いったいぜんたい、
こいつぁ、どういうことだ?
イオ
突然そんなこと言われても……
ど、どうしたらいいの……?
帝国兵
この先の空にある
城砦都市アルビオンで、
フュリアス将軍閣下がお待ちだ。
帝国兵
詳しい話はそこで聞くといい。
カタリナ
ア、アルビオンだと……!?
ルリア
カタリナ? 大丈夫?
顔色が良くないみたいだけど。
カタリナ
……だ、大丈夫だ。
いつか……いつかは、
こんな日が来ると思っていた。
帝国の使者は、
一方的に用件だけを告げ、
戦艦へと戻っていく。
グラン一行は、
帝国の告げた和解の真意を確かめるため
城砦都市アルビオンへと舵を切った。