ヴィーラに案内され、アルビオン城の貴賓室に訪れると、そこには上機嫌なフュリアスが待ち構えていた。
グランたちとの争いが割に合わないという理由で和解を申し出るフュリアス。
戸惑いを隠せない一行に、ヴィーラは休息を提案する──
グラン一行は、
ヴィーラに案内され、
アルビオン城の貴賓室を訪れる。
そこでは、
いやに上機嫌なフュリアスが
数人の兵を引き連れ、待ち構えていた。
フュリアス
――いやぁ、まいったよ、ホント!
まいったまいった!
フュリアス
君達さぁ、
ボクらが思ってたよりもずっと強くて
いい加減、割に合わないんだよねぇ。
カタリナ
割に合わない……とは?
フュリアス
言葉通りさ!
なにせその機密の少女は
謎が多すぎる。
フュリアス
取り返して、
その力の全てを解明したところで、
利益になるかは五分ってとこだ。
フュリアス
それなら、
その分の労力を別の事に使った方が
帝国全体の確実な利益になるってわけ。
そう軽い調子で話し、
フュリアスはおもむろに席を立つ。
フュリアス
ま、そういうわけだから!
もう君達は晴れて自由の身だ。
フュリアス
どこだろうと
好きなところに行くといい。
フュリアス
じゃあね!
また会うことがあれば、
今度はお茶でも飲もうじゃないか。
一方的に事情を告げられ、
グランは、
貴賓室から追い払われた。
ビィ
ちょ、ちょっと待ってくれ……
オイラ、頭がついていかねぇぜ……
ラカム
あれだけ戦っといて、
こうもあっさり、
引き下がられたんじゃなぁ……
ヴィーラ
……どうでしょう、皆様。
まずは宿を取ってゆっくり休み、
それから考えてみてはいかがですか?
ヴィーラ
ちょうどお城の客室に
空きがありますし……
ビィ
それがいいや!
なぁ、グラン!
まずはゆっくり休もうぜ!
ラカム
俺も賛成だ。
ヴィーラちゃん、案内頼むぜ!
帝国の申し出が信用できず、裏を探るグランたち。
深刻な様子で思い悩むカタリナを安心させるように、ヴィーラは全て任せるようにと進言するのだった。
カタリナ
本当に……
本当にこれで全て片付いたのだろうか?
ロゼッタ
さっきの小さい将軍の言ってたことが、
信じられない?
筋は通ってたと思うけど。
オイゲン
まぁ、なんぼ言ったって
連中は敵だからなぁ、
信用できないってのはわかるぜ。
カタリナ
なにか裏があるように
思えてならないんだ……
このままで終わるはずが……
ヴィーラ
それは杞憂です、お姉様。
カタリナ
ヴィーラ……
ヴィーラ
お姉様が今日まで
どのような旅を続けてきたか
聞きました……
ヴィーラ
可哀想なお姉様……
連日の戦いでお姉様は
お疲れになっているんです……
ヴィーラ
お姉様が心配することは、
何もありません。
全て私にお任せください……
オイゲン
がははははっ!
先輩思いな
いい後輩じゃねぇか、おい!
ヴィーラ
ありがとうございます。
魔物
グオオォォッ!!
ヴィーラ
さぁ、この魔物を倒せば
客室は目の前です。
ヴィーラ
もう少しですから頑張りましょうね。
グランさん。
アルビオン城の客室を管理しているシェロに促され、一行はひと時の休息を得る。
──翌朝、カタリナは短い置手紙だけを残し、一行の前から姿を消したのだった。
シェロカルテ
――いらっしゃ~い!
よろず屋、
アルビオン城支店へようこそ~!
ラカム
な、なんでシェロがここに!?
城の客室じゃねぇのかよ?
シェロカルテ
どこにでも居て
どこにも居ない、
それがよろず屋ですよ~
ヴィーラ
客室の管理をお任せしているんです。
とても頼りになるんですよ。
シェロカルテ
さぁさぁ、事情は聞きましたよ~
今日はバッチリしっかり、
休んじゃってくださいね~
アルビオン城内の客室で、
グラン一行は
静かな一夜を過ごす。
その翌朝、
カタリナは短い置手紙だけを残し、
一同の前から姿を消したのだった。