グラン
達は必死に王宮を探し回るのだが、そこはあまりにも広く、一向にオルキスが見つかる気配がない。焦る黒騎士へ、カタリナが疑念をぶつける。黒騎士が何か隠している事を感じ取ったカタリナは、自らが守るべき者のため、全てを知っておきたいのだという。
黒騎士
くそ……
そう広いわけではないんだが、
どうにも見つからんな……
黒騎士
いっそ二手に分かれたほうが賢明か?
しらみ潰しに探していけば、
見つかるとは思うが……
カタリナ
黒騎士……
一つ……私の問いに答えてくれないか?
黒騎士
なんだ?
もう必要なことは、
粗方話したと思うが……
カタリナ
では、その必要ないものの話だ。
私達が知る必要のない真実、
その話をしよう。
黒騎士
なんだと……?
カタリナ
私は……
正直に言って、いま迷っている。
私達は……貴殿を信用してもいいのか?
ルリア
カタリナ……?
ラカム
俺は……
いいんじゃないかと思うぜ、
信用しても。
ラカム
ラビ島に来てからこっち、
黒騎士は俺達の知らなかったことを
かなり教えてくれたしな。
カタリナ
ああ……それは私もそう思う。
だが、それだけではないんだ……
そうだろう?
黒騎士
何が言いたい……?
カタリナ
貴殿は私達に
嘘ないし、幾つかの真実を
意図的に隠している。
黒騎士
それは……
貴様らが知る必要が無いから、
話していないだけだ。
カタリナ
本当にそうなら、
どんなにいいだろうな……
私も貴殿を信じたいと思っている。
カタリナ
だが……だがな。
私には……私達に必要のないはずの、
欠けた真実が気になって仕方がないんだ。
黒騎士
ふん……
無用な好奇心は身を滅ぼすぞ。
カタリナ
好奇心じゃない……
私には守りたい者がいる。
大切な存在がいる……貴殿と同じだ。
カタリナ
だから、不完全な真実ではダメなんだ。
もしここで貴殿を信用し、
ルリアに何かあったのなら……
カタリナ
私は不完全な真実で妥協した自分を、
一生許すことが出来ないだろう。
わかってもらえないか?
黒騎士
…………
カタリナは、エルステの王族の血を引くオルキスを差し置いてエルステ帝国に皇帝が据えられている事、オルキスの感情を取り戻す方法が一切明かされていない事など、黒騎士が語らなかった事について詰問する。黒騎士は答えず、オルキスを取り戻す事が目的であるとだけ口にした。
カタリナ
アマルティアで貴殿は、
エルステ帝国皇帝の姿を見たことがない、
と言ったな。
カタリナ
しかし、貴殿の話を聞くに、
エルステ帝国の前身である、
エルステ王国の王族の血筋はもう無い。
カタリナ
私も姿を見たことはないが……
そもそもエルステ帝国には、
皇帝など居ないのではないか?
カタリナ
それともいまの皇帝は、
最後に残った王族のオルキスではない、
別の血筋の誰かを立てたものなのか?
黒騎士
さぁ……どうだろうな?
カタリナ
それだけじゃない……
オルキスを元に戻したい、
という貴殿の目的は聞いたが……
カタリナ
貴殿はそれを、
どうやって成し遂げるつもりなんだ?
その方法を私達はまだ聞いていない。
黒騎士
そうだな。
確かにまだ私はそれを話していない。
イオ
じゃあ、いまここで話してくれたら、
カタリナのモヤモヤも
晴れるんじゃない?
黒騎士
悪いがそれも出来ない。
私の目的は、
貴様らとのお友達ごっこではないからな。
黒騎士
私は私の目的のために、
己の全てを費やすつもりだ。
その邪魔は誰にもさせない。
黒騎士
私から言えるのは、それだけだ。
カタリナ
私達は……
貴殿を信用してもいいのか?
黒騎士
それを決めるのは私ではない。
それぐらいはわかるだろう?
カタリナ
そう……だな……
黒騎士
ふん……
気落ちしている場合ではないぞ。
黒騎士
まだオルキスは見つかっていないのだ。
いましばらく、
貴様らの力を貸してもらうぞ!
古き王宮の中でオルキスを見つけるどころか、宰相フリーシアの気配さえ無い。オルキスが連れて行かれたのは、今グラン
らがいるラビ島とは別の場所ではないか、という可能性がグラン達の頭をよぎる。オルキス奪還という目的が遠ざかり、黒騎士の焦りは募ってゆく。
カタリナ
…………
黒騎士
…………
ラカム
そ、それにしてもオルキスちゃん、
なかなか見つかんねぇな!
どっかに隠れてやがるのか?
イオ
オルキスちゃんだけじゃなくて、
あの宰相さんも、
出てこないわよね……
ビィ
まさかとは思うけどよぅ……
もしかして、
あいつら、この島には……
黒騎士
…………
ビィ
ひぃっ!?
ルリア
と、とにかくもう少し
探してみましょう!
ねっ! グラン!
オルキスを探し、
王宮の中を彷徨い続ける
グラン一行。
しかし、その結果は思わしくなく、
黒騎士の顔には、
徐々に焦りの色が浮かび始めるのだった。