星の民の遺跡がどうしてルーマシー群島にあるのか、疑問を抱くオイゲン。その問いに対し黒騎士は、ルーマシー群島は元々エルステ王国の領土であり、空に残った星の民に居留地としてエルステ王国が提供していたことを、事もなげに明かす。
オイゲン
しかし、星の民の遺跡か……
なんだってルーマシーの森に、
そんなもンがあるんだか……
黒騎士
ふん……
貴様も少しは歴史を学ぶことだな。
オイゲン
はっはっは！ いや、悪ぃなぁ！
座ってお勉強、ってのは、
どーにも昔から苦手でよ！
オイゲン
それに比べて、
お前は小っちぇ頃から、
本を読むのが好きだったよな……
黒騎士
ちっ……
いまさら思い出話をされようと、
乗ってやるつもりはないぞ。
ビィ
な、なぁ……
それで、なんだって星の民の遺跡が、
ルーマシーにあるんだよ？
黒騎士
それを説明するには
ルーマシー群島の歴史に
触れる必要がある。
カタリナ
ルーマシーの歴史か……
見ての通り未開の地だからな、
あまり歴史はなかったように思うが……
カタリナ
そういえば、
ルーマシーはいまでこそ
メネア皇国領だが……
カタリナ
確か以前は、
エルステ帝国の領土だったな？
黒騎士
その通り……
ルーマシー群島は、
エルステ王国時代からの領土だ。
黒騎士
覇空戦争後、
空に残った星の民達を
エルステ王国が保護し……
黒騎士
秘密裏にルーマシー群島を
居留地として提供していたのだ。
黒騎士
それをエルステの国力が
衰退した機を見計らって
メネアの連中が占領していってな……
黒騎士
まったく……
メネアの連中は価値もわからんくせに
領土だけはやたらと……
カタリナ
ちょ、ちょっと待て！
いま当たり前のように話していたが、
いくつか聞き捨てならないことが……
黒騎士
知りたいのなら教えてやる。
ただ先に魔物を片づけるぞ。
少々群れを成してやってきたようだ……
空の世界への侵略者である星の民とエルステ王国が、友好的な関係を結んでいた事に驚きを隠せない一行。覇空戦争の後も空に残った星の民がいると聞き、星の島への手がかりを期待するが、黒騎士いわく、数十年前にはすでにほとんどの星の民が居なくなってしまっていたのだという。
黒騎士
エルステは以前から、
星の民とは友好的な関係を
結んでいたのだ。
黒騎士
まぁ、無論、
星の民はこの世界の侵略者だからな、
秘密裏にではあるが……
カタリナ
オルキスのご両親が、
ある意味、
その友好関係の象徴というわけか……
カタリナ
しかし、
空に残った星の民というのは……
黒騎士
覇空戦争の後、全ての星の民が、
空の果てへと帰っていった、
というわけではないらしくてな。
ルリア
じゃ、じゃあ！
いまもどこかに……
この空のどこかに星の民が……？
黒騎士
いや、それはない。
私が知る限り、オルキスの父君が、
空に残る最後の星の民だったらしい。
黒騎士
空に残った星の民達は、
数十年前にはすでに、
オルキスの父君だけとなり……
黒騎士
このルーマシーの居留地を捨て、
エルステのメフォラシュに
移り住んでいたからな。
イオ
そこでその人は、
オルキスのお母さんと、
恋に落ちた、ってことなのね！
黒騎士
そうだな。
なかなかその関係を認めてもらうのも、
苦労したそうだが……
黒騎士
む……いや、待て。
そういえば確か、まだ他にも
星の民の生き残りがいたな……
ビィ
本当か！？
もしそいつに会えりゃ、
一気に空の果てまで……
黒騎士
いや……
そいつがいま、
どこに居るのかは私も知らん。
黒騎士
オルキスの父君には、
弟が一人いたらしくてな……
黒騎士
しかし、その弟は、
オルキスのご両親の仲に反発し、
姿を消してしまったらしい。
ルリア
そんな人がいたんですね……
いまは何をしているんでしょうか？
黒騎士
さぁな……
一切話は聞かないが……
黒騎士
ともかく、無駄話はここまでだ。
じきにルーマシーに着く頃合いだろう。
油断するなよ、グラン。
第37章
森に眠る歴史 
