黒騎士は、ルリアをこの場に呼ぶための駒でしかなかった。ルリアとオルキス、世界を改変するための2つの鍵を揃えたフリーシアはオルキスにアーカーシャの起動を命ずる。そして世界を歪めようと力を解き放たんとした瞬間、オルキスの脳裡に浮かんだのは、グラン
達と過ごした思い出だった。オルキスに芽生えた迷いがグランらを解放した。うろたえるフリーシアの隙を突き、一行はルリアとオルキスを奪還する。
帝国兵
ぐ……げふっ……
さ、宰相閣下……
帝国兵
お、恐れながら申し上げます……
先ほどの「マリス」の攻撃で、
我が軍にも多数の負傷者が……
フリーシア
それが?
帝国兵
は……?
フリーシア
それが、どうしたというのですか?
役立たずの有象無象など、
いくら失おうと構うことはありません。
帝国兵
そんな……!
黒騎士
ぐ……ごほっ……
ふ、ふざけるなよ……
フリーシア
おや……
まだ息があったのですね……
黒騎士
こんな……
オルキスを復活させる条件は、
全て揃ったというのに……
黒騎士
こんな……
こんなところで、
負けるわけには……!!
フリーシア
くくく……これだから小娘は。
黒騎士
なに……?
フリーシア
絶望に嘆く者は、
目の前に都合の良い希望を与えられると、
簡単にそれに食らいつく……
フリーシア
その希望の真偽を
確かめることもせずに……
フリーシア
いえ……
希望を失わないためには、
仕方がないことなのかもしれませんね。
黒騎士
どういう……ことだ。
フリーシア
確かにルリアには、
瀕死の者を生き返らせる能力がある……
フリーシア
しかし……
それは決して、貴方の思っているような
便利な能力ではありません。
黒騎士
なに……?
フリーシア
あの能力は「器」であるルリアが
空の世界で力の全てを解放するため、
自らを空の存在と融合させる能力です。
フリーシア
つまり……
一度使えば、二度と使うことは出来ない。
フリーシア
端的に言えば……
もうあのオルキスは戻ってこない
ということです……
黒騎士
そん……な……
オイゲン
お、おい!
しっかりしろ! アポロ!
ロゼッタ
…………
フリーシア
さぁ……それではさっさと、
この世界を終わらせてしまいましょうか。
フリーシア
オルキス……
アーカーシャの起動を。
オルキス
…………
小さく頷くと、
オルキスはルリアの方へと歩き始める。
ルリア
オルキスちゃん……?
カタリナ
待て!
ルリアには指一本、
触れさせるわけには……ぐっ!?
カタリナ
何故だ……
か、身体が……!?
フリーシア
ふふ……
「マリス」と戦って、
無事で済むとは思わないことです。
ルリア
カタリナ……!
ルリア
ねぇ、待って、オルキスちゃん!
ダメだよ、こんなの!
ルリア
その星晶獣を使ったら、
私もオルキスちゃんも、
居なく……っ!?
ルリア
…………
カタリナ
ルリアっ!?
オルキス
…………
オルキス
我、アルクスの名において、
星晶獣アーカーシャの起動を執り行う。
ルリア
……管理者の認証を完了しました。
星晶獣アーカーシャの
起動要請を受諾……
ビィ
お、おい、ルリア!
どうしたってんだ!?
なぁ、おい!
ルリア
管理者権限を
ビューレイスト・アルクスから移譲、
……掌握。
ルリア
星晶獣アーカーシャを起動します。
???
――――
フリーシア
これが……
アーカーシャ……
オルキス
…………
ルリア
…………
フリーシア
さぁ……命じなさい、オルキス。
星の歴史を、
この世界から抹消するのです。
オルキス
…………
オルキス
…………
ラカム
えー、なんだ……
嬢ちゃんはここで何してるんだ?
???
違う。
ラカム
え?
オルキス
嬢ちゃん、じゃない……
私の名前は、オルキス。
ルリア
……オルキスちゃんっていうんだ。
ルリア
ねぇねぇ、私、ルリア!
それでこっちがグラン!
よろしくね、オルキスちゃん!
オルキス
よろしく……って、なに?
ルリア
え? えーっと……
な、なんだろう? グラン……
イオ
これから友達になろうねってこと!
あたしはイオ、よろしくね。
オルキス
友達……これから……
私と……?
黒騎士
ちっ……行くぞ、人形。
オルキス
…………
黒騎士
おい、何をしている……?
なんのまねだ?
オルキス
わ、私……
もう少しだけ……
ルリア達と一緒に居たい……
ルリア
ねぇ、どうして……?
答えてよ、オルキスちゃん……
オルキス
…………
ルリア
どうしてオルキスちゃんは
そこに居るの?
私達の手を取らないのは、どうして?
オルキス
…………
ルリア
もう何も聞こえないの……?
オルキスちゃん……!!
オルキス
…………っ!!
オルキス
い、いや……だ。
オルキス
いやだっ……!!
ルリア
っ!?
わ、私……?
オルキスちゃん……?
フリーシア
なに……?
ビィ
ル、ルリアが元に戻ったぜ!
カタリナ
ああ!
それに身体も動く!
ラカム
い、いったい何が
起きてるってんだ……!?
カタリナ
いまはとにかく二人を連れて、
ここを離れるんだ! グラン!
危うい所でフリーシアの手を逃れた一行に、帝国兵達が決死の覚悟で追いすがる。満身創痍のグラン達は、それを全力で迎え撃つのであった。
帝国兵
くそっ! 逃がすか!
ラカム
あれだけの目に遭っても、
帝国は裏切れねぇってのか……
カタリナ
悪いが手加減してやれる余裕はない!
一気に突破するぞ!
グラン!
フリーシアの操るユグドラシル・マリスに追い詰められ絶体絶命のグラン
達。その間に立ち塞がるように、謎の星晶獣が姿を現した。そして謎の星晶獣との衝突により、ユグドラシル・マリスは活動の限界を迎える。その隙をついて艇に雪崩れ込み、島からの脱出をはかる一行。しかし、ロゼッタはこの場に残るという。そしてロゼッタがビィに全てを託した瞬間、グランサイファーは自我を持ったかのように、ロゼッタを残して飛び立つのであった。
グラン一行は、
ルリアとオルキスを連れ、
神殿の入口まで駆け戻る。
ルリア
カ、カタリナ……
私、いったい何を……?
オルキス
…………
カタリナ
詳しい話は後だ!
とにかくいまはここから逃げ……
フリーシア
待ちなさい!
逃げ切れると思ったのですか……?
ラカム
くっ……
追いつかれちまったか……
フリーシア
予想外の事態は起きたが……
決してお前達を逃がしはしない!
フリーシア
奴らを捕えろ!
ユグドラシル・マリス!
ユグドラシル・マリス
――――!!
カタリナ
くっ……
またあの星晶獣を……!?
フリーシア
この際、多少の負傷はやむをえません。
オルキスもルリアも、
生きてさえいれば……
???
それはちょっとひどいんじゃないの?
???
――――
カタリナ
こ、この星晶獣は……!?
フリーシア
ちぃっ!!
なんだこの星晶獣は!
蹴散らせ! マリス!
ユグドラシル・マリス
――――!!
帝国兵
宰相閣下!
このままでは
ユグドラシルが崩壊します!
帝国兵
このまま、
ユグドラシル・マリスを
使い続けるのは危険です!
フリーシア
くそっ……!!
ラカム
よくわかんねぇがチャンスだ!
このまま逃げるぞ! グラン!
ラカム
早くグランサイファーに乗れ!
すぐに離陸するぞ!
ロゼッタ
…………
カタリナ
どうした?
ロゼッタも早く……
ロゼッタ
ごめんなさい……
アタシはもう、
貴方達とは行けないわ……
イオ
ロゼッタ!?
どうして、そんな……
ロゼッタ
アタシには、
ここに残らなくちゃいけない
理由があるの……
ロゼッタ
けれど……
必ず助けに来て、あの子を……
ルリア
あの子……?
ロゼッタ
ユグドラシルは、島に眠るコアに、
魔晶によって
過剰な力を注ぎこまれてるわ……
ロゼッタ
それも純粋な星の力ではなく、
粗悪な模造品の力を……
ロゼッタ
そのせいで、
あの子はもう壊れる寸前なの……
だから誰かがそばに居てあげないと……
ロゼッタ
だけど……
必ず助けに来てあげて……
ロゼッタ
あの子を救う力が貴方達にはあるの……
あの子は、
貴方達しか救うことが出来ない……
ロゼッタ
貴方は
思い出したくもないでしょうけど……
お願いね……ビィ君。
ビィ
んぇっ!?
オ、オイラ……!?
ラカム
お、おい!
グランサイファーが勝手に……!
早く飛び乗れ!
ロゼッタ
ふふ……
イオ
ロゼッタ……!
こうしてグランサイファーは、
ロゼッタをルーマシー群島に残し、
大空へと舞い上がる。
数々の傷を残しながらも、
一行はルーマシー群島を
脱出するのだった。