リーシャから話を聞こうとするものの、状況がそれを許さず、再び帝国兵の追手と行き合う事になる。安全な隠れ家に案内すると言って一行を連れ出すリーシャ。彼女によれば、秩序の騎空団の本部ですら安全ではないのだという。リーシャの導きに従い、一行は町外れへと足を向けるのであった。
リーシャ
あ、あなた達は……
どうしてこの島に?
フリーシア宰相の件は……?
リーシャ
あれ?
黒騎士とは別れたのですか?
それに女性がひとり足りないような……
オイゲン
まぁ、色々あってな……
オイゲン
それで、
嬢ちゃん達の力が必要になって、
オレ達ゃこの島を訪ねたんだが……
カタリナ
リーシャ殿……
いま、この島は
どういう状況なんだ?
カタリナ
なぜ船長であるリーシャ殿が
帝国兵に追われている?
カタリナ
それに、
あの街の荒れ様は……
いったい何があったんだ?
リーシャ
それは……
帝国兵
居たぞ!
こっちだ!
リーシャ
くっ……
ひとまず事情の説明は後です。
リーシャ
付いて来てください。
落ち着いて話の出来る場所へ
案内します。
そう言ってリーシャは、
街外れの方向へと歩き始める。
ビィ
安全な場所って……
あの秩序の騎空団の
本部には行かねーのか?
リーシャ
それも含めて説明します……
だからいまは、付いて来てください。
街の中心部から離れ、魔物の徘徊する中を進む一行。事情を尋ねるのだが、リーシャは口ごもってしまう。彼女の表情から読み取れるのは、今、アマルティアが帝国の占領下にあるということだけだった。
リーシャの案内で、
グラン一行は、
徐々に島の中心街から離れていく。
カタリナ
ここまで来ると帝国兵の姿は無いが、
代わりに魔物の数が増えてくるな……
リーシャ
いえ、油断はしないでください。
帝国は島の隅々まで
兵を配置しています。
カタリナ
なに……?
それではまるでこの島が、
完全に帝国の占領下にあるようだが……
リーシャ
…………
ラカム
なるほど……だいたい読めてきたぜ。
いま、この島が
置かれている状況ってやつが、な。
隠れ家に着いた一行へ、リーシャがアマルティアで起きた事件を語る。リーシャがメフォラシュへと向かった隙に帝国軍に攻め込まれ、占領されてしまったという。モニカが抵抗したが、彼女を上回る実力を持つガンダルヴァという男に敗れ、囚われたらしい。戦力が欲しいと告げるリーシャへ、ビィの情報を得るために秩序の騎空団の書庫を閲覧する事を交換条件に、協力を申し出るのであった。
一行が案内されたのは、
街外れの森にある
一軒の小さな小屋だった。
騎空士1
リーシャ船長!
ああ、よくぞご無事で……
騎空士2
船長……
偵察からの情報によると
西の森の部隊もほぼ全滅かと……
リーシャ
わかりました……
やはり希望をかけられる状況では
ないようですね……
リーシャ
偵察部隊には引き続き、
島内の緊急時の拠点を
巡回するよう伝えてください。
リーシャ
中でも、
ほとんど放棄されているような
古いものが優先です。
リーシャ
新しい拠点は本部の情報から、
ほぼ全てに制圧部隊が
派遣されているようですから……
騎空士2
はっ!
オイゲン
さて……
ひとまずここにゃあ、
敵の姿はねぇみてぇだが……
カタリナ
教えてくれ、リーシャ殿……
いったい、この島には何があった?
リーシャ
…………
リーシャ
秩序の騎空団第四騎空艇団が本部、
アマルティア島は現在……
エルステ帝国の占領下にあります……
リーシャ
あなた達はご存知のように、
私はラビ島のメフォラシュに向かい、
一時、この島から不在になりました。
リーシャ
その間に、
帝国軍がアマルティア島に、
攻め込んできたそうです……
カタリナ
いや、待て……
リーシャ殿が不在だったとしても、
島にはモニカ殿が居たのでは……?
リーシャ
はい……
確かに第四騎空艇団は、
モニカさんを指揮官に応戦しました……
リーシャ
しかし……
ラカム
負けた、ってのか……
そうでなきゃ、
こんな事態にはならねぇよな……
イオ
嘘でしょ!?
だって、アマルティアを出るときに、
あの人とも戦ったけど……
イオ
あの人、小さいのに、
めちゃくちゃ強かったじゃない!
カタリナ
ああ……
確かに、あのモニカ殿が負けるとは、
にわかに信じがたいな……
リーシャ
私も耳を疑いました……
何かの間違いではないか、と……
リーシャ
しかし、全ては事実であり……
現在、モニカさんは
第四庁舎の牢に囚われています。
カタリナ
馬鹿な……
いったい何があったというんだ?
年配の騎空士
その説明は私から……
一行がリーシャの話に
耳を疑っていると、
ひとりの騎空士が歩み出た。
年配の騎空士
帝国が攻めてきた際、
リーシャ船長は不在でしたが、
島にはモニカ船長補佐が居ました。
年配の騎空士
だから我々も、
何が来ようと負けることはないだろう、
と安心していたのですが……
年配の騎空士
しかし……
帝国の指揮官が、その……
オイゲン
おいおい……
ここまで来て、
隠し事は無しにしようぜ?
リーシャ
続けてください……
彼らは信用に足る人物たちです。
年配の騎空士
はい……
敵の指揮官、
エルステ帝国中将ガンダルヴァは……
年配の騎空士
以前、この秩序の騎空団で、
船団長を務めていた男なのです……
カタリナ
なに……?
どうしてそんな男が……
リーシャ
私が秩序の騎空団に入団した頃には、
既にガンダルヴァは
団を追放されていました。
リーシャ
なので、団内の資料からの情報ですが、
彼はモニカさんにも勝るほどの
圧倒的な実力を持っていたそうです。
リーシャ
しかし、その粗暴さと傲慢さから、
懲罰の対象となるものの、
それに従わず……
リーシャ
秩序の騎空団のトップ……
碧の騎士との決闘の末、
団を追放され、島から姿を消したのです。
ラカム
そんな男が、
今度は帝国の中将となって、
島に戻ってきたってわけか……
イオ
そ、そんなに強い人が
まだ居たのね……
リーシャ
ガンダルヴァはモニカさんを退け、
現在は帝国軍中将として、
兵達と共に第四庁舎を占拠しています。
カタリナ
つまり中枢を乗っ取られ、
残った少数で、
抵抗を試みている、ということか……
ビィ
おいおい……
こりゃ想像以上に
やべぇ状況なんじゃねぇのか……?
リーシャ
苦しい戦況なのは重々承知です。
しかし、諦めることなど……
ルリア
ねぇ、グラン……
選択肢
力になるよ
リーシャ
えっ……?
ルリア
そうですっ!
同じ騎空士として、この状況を
見捨てておくなんて出来ません!
カタリナ
まぁ、確かに……
この事態が収拾しないことには、
私達の目的も達成できないからな。
リーシャ
そういえば……
あなた達はどうしてアマルティアに?
一行はリーシャに
ラビ島で別れて以降の
事のあらましを説明する。
リーシャ
そんなことが……
何よりフリーシア宰相が、
そんな目的を持っていたなんて……
カタリナ
そういうわけで、
私達には情報が必要なんだ。
リーシャ
その羽トカゲに関する情報ですか?
あったかな……?
リーシャ
確かに第四庁舎の資料庫には、
空域を跨る様々な文献資料が
所蔵されていますが……
ラカム
うし!
じゃあ、話は決まりだな!
ラカム
俺達はあんた達に手を貸す……
あんた達は俺達の情報収集に協力する、
それで構わねぇな?
リーシャ
ううっ……
まぁ、背に腹は代えられませんから……
ルリア
それじゃあ、
よろしくお願いしますね!
リーシャさん!
こうして一行はリーシャの手を取り、
秩序の騎空団と一時的な同盟を結ぶ。
後にこの縁は、
ファータグランデ空域を揺るがす、
大きな事件へと繋がっていくのだった。