第四庁舎へと急ぐグラン
達一行の前で道が二手に分かれる。一つは近道だが危険な道、もう一つは時間はかかるが逃げ場を確保できる安全な道だった。自分の留守中にアマルティアを攻略されたことに責任を感じているリーシャは危険な道の方を強弁する。本来冷静さが取り柄の彼女の焦りにグラン
達は一抹の不安を抱く。
カタリナ
はあぁぁぁっ!!
帝国兵1
くっ……!
カタリナ
やはり数が多いな……
この人数で島中の兵を相手にするのは、
さすがに……っ!?
カタリナ
リーシャ殿ッ!!
後ろだ!
リーシャ
…………
カタリナ
どうした!?
くそっ! 届くか!?
リーシャ
っ!?
帝国兵2
ぐふっ……
く、くそ……
リーシャ
あ……
オイゲン
おいおい……
さすがにいまは、
呆けてる場合じゃねぇだろ、なぁ?
リーシャ
す、すみません……
空域を跨る情報を手に入れるため、
リーシャ達秩序の騎空団と
共闘戦線を張るグラン一行。
一行は帝国兵を倒しながら、
帝国に乗っ取られた
第四庁舎奪還を目指すが……
カタリナ
どうした? リーシャ殿……
先ほどから、
あまり集中できていないようだが……
リーシャ
い、いえ! 大丈夫です!
それより早く先へ進みましょう!
カタリナ
…………
リーシャ
早く……
早く助けないと……
私が……
騎空士
それでこの先のルートですが……
中央通りと路地の
どちらを進みますか?
騎空士
路地のほうが近道ではありますが、
帝国兵と鉢合わせた際の、
脱出ルートが確保できず……
騎空士
あの……リーシャ船長?
何かご意見は……?
リーシャ船長?
リーシャ
っ!? あ、えと……
で、では第四庁舎に
近いほうを進みましょうか。
イオ
でも、近道のほうだと、
騎空士さんの言うように、
いざって時の逃げ場が……
リーシャ
状況は一刻を争います。
一秒でも早くモニカさん達を助け出して、
この状況を打開しないと……
カタリナ
気持ちはわかるが、
落ち着くんだリーシャ殿……
カタリナ
こういう時だからこそ、
冷静な判断を……
リーシャ
私はいたって冷静です。
さぁ、もう行きましょう。
作戦会議に費やす時間が惜しいです。
騎空士
リーシャ船長……
イオ
リーシャさんって、
前からあんなにせっかちだったかしら?
オルキス
違う……
モニカと一緒に居た時は、
もっと余裕があった……
ルリア
リーシャさん、
不安なんでしょうか……
オイゲン
それもあるたぁ思うが……
人一倍、
責任を感じちまってるんだろうな……
オイゲン
話を聞くに、
アマルティアが占領されたのは、
リーシャが島を空けてた間の事だ。
オイゲン
まぁ……リーシャが居たところで、
その中将とやらに
勝てたかどうかはわからねぇが……
カタリナ
それがまた自分でもわかっているから、
一層、
焦ってしまうのかもしれないな……
リーシャ
…………
グラン
一行が第四庁舎へ至ろうかという時、そこで待ち構えていたのはガンダルヴァ本人であった。彼はリーシャが素直に捕まるのであればモニカは解放しようと取引を持ちかける。全てはリーシャを餌に彼女の父ヴァルフリートをおびき出す為だった。焦るリーシャはその求めに応じようとするが、グラン
達は彼女を守るべく剣を抜く。
リーシャ
ひとまず道のりは順調ですね。
後はこの先の道から、
第四庁舎裏口のあたりに……
ガンダルヴァ
よう、雑魚ども!
来るのが遅いぞ!
待ちくたびれちまったじゃねぇか!
カタリナ
貴様は……?
リーシャ
ガンダルヴァ……!!
貴様、よくもモニカさんを……!
ガンダルヴァ
怖い顔すんじゃねぇよ……
オレ様は別に、
あくどいことは何もしてないぜ?
ガンダルヴァ
モニカとは正々堂々戦った……
んで、オレ様が勝った、当然な。
だからとっ捕まえた、それだけだ。
リーシャ
黙れっ!
貴様、いったい何が目的だ!?
何のために戻ってきた!?
ガンダルヴァ
おお、
ちょうどその話をしようと思ってな、
それでお前を探してたんだよ。
リーシャ
なんだと……?
ガンダルヴァ
ちょいと取引しねぇか?
悪い話じゃあねぇからよ。
ガンダルヴァ
オレ様の目的はたったひとつ、
あのクソ野郎……
ヴァルフリートとの再戦だ。
ガンダルヴァ
けどまぁ、なかなか捉まらなくてな……
あくせく追い回すのも、
オレ様の性に合わねぇ。
ガンダルヴァ
そこでだ!
あのクソ野郎も、
一応、人の子だってのを思い出してな。
ガンダルヴァ
流石のヴァルフリートも、
娘を人質にされりゃあ、
向こうから出てきてくれるだろ。
リーシャ
私に……
父さんを呼び出すための
人質になれって言うの……?
ガンダルヴァ
その通りだ!
正直、帝国も秩序の騎空団も、
オレ様にとっちゃ意味はねぇ。
ガンダルヴァ
お前が人質になってくれるなら、
兵達は島から引き揚げさせるし、
モニカも解放してやるよ。
リーシャ
…………
カタリナ
ガンダルヴァと言ったな……
貴殿はそのような取引を
持ちかけるが……
カタリナ
貴殿がその取引を
守る保証はどこにある?
ガンダルヴァ
はーっはっはぁ!
イイ質問だ!
さっすがカタリナ元中尉だねぇ!
カタリナ
なに……?
なぜ私の名前を……
ガンダルヴァ
オレ様は強い奴に、
目が無くってなぁ……
ガンダルヴァ
帝国の資料を見させてもらったぜ。
冷静沈着で剣の腕に優れる……
裏切り者の元中尉……
ガンダルヴァ
しかもその剣の腕は、
あのアルビオンの卒業生でも、
歴代最強クラスときたもんだ!
ガンダルヴァ
たまんねぇよなぁ……
なぁ、後で一戦交えねぇか?
なんならいまでもいいぜ?
カタリナ
下衆が……!
質問に答えてもらおうか。
ガンダルヴァ
ああ、オレ様が約束を守るかって?
そりゃ信じてもらうしかねぇなぁ。
ガンダルヴァ
だが、よーく考えろよ。
ここで取引に応じないなら、
結局、オレ様が全員ぶっ潰すだけだぜ?
カタリナ
リーシャ殿……
やはり先ほどの話、
信じるに値するとは……
リーシャ
わかりました……
私が人質となることで、
モニカさんが解放されるなら……
カタリナ
リーシャ殿!?
イオ
ちょ、ちょっと!
なに言ってんのよ!
イオ
さっきのカタリナと、
あのおじさんの
やりとり聞いてたの!?
リーシャ
関係ない……
私が犠牲になって、
みんなを助けることが出来るなら……
ラカム
ちっ……!
こんな状態で、
人質として渡せるかよ!
ガンダルヴァ
おお、威勢が良いなぁ!
元気がある奴は嫌いじゃねぇよ!
ガンダルヴァ
ただ逃がしてやる気はねぇぞ!
せっかくだから一戦やってけよ!
なぁ!!
オイゲン
ちっ……
こういう野郎が、
なんだかんだで一番厄介なんだよな……
イオ
ふん! そんな風に仕掛けておいて、
あとで泣きべそかいても
知らないんだから!