村人達を避難させ、再びフュリアスと相対する一行。そんな折、ビィは自らに「マリス」を止める力があるのなら、その力で魔晶も止めることが出来るかもしれない、と提案する。しかし、それにはビィ自身が恐れる記憶の解放が伴うが、ビィはロゼッタを信じ、自らの故郷のために立ち上がる決意を固める。
となれば……
やはりあの将軍を、
ラカム
ちっ……!
魔晶さえなきゃあ、
あんな奴、なんてことはねぇんだが……
ビィ
な、なぁ……
それなんだけどよ……
沈黙を貫いていたビィは、
おずおずとその手を挙げる。
ビィ
オ、オイラ……
やっぱりあの封印を、
解こうと思うんだ……
カタリナ
なっ……!?
い、いや、しかし何故いま……?
ビィ
あの小っちぇ将軍の力も、
ユグドラシル・マリスと同じで、
魔晶の力なんだろ?
ビィ
もしロゼッタが言ってたように、
オイラに「マリス」を
止める力があるなら……
ビィ
それって、
魔晶を止められる力がある
ってことなんじゃねーのか?
カタリナ
た、確かに……
ロゼッタは「マリス」を
魔晶によるものだと説明していたが……
カタリナ
だが、ビィ君……
同時にロゼッタが言っていたことは、
君も気にしていただろう?
カタリナ
封印を解いて記憶を取り戻すことで、
ビィ君が
ビィ君でなくなってしまうなら……
ビィ
へへっ……それなんだけどよ。
オイラ、考えたんだ!
ビィ
きっとロゼッタはオイラに、
そんなことをしてくれ、って言わねぇ。
ビィ
ロゼッタも姐さんと同じ気持ちなら
あんなこと
言わなかったに決まってらぁ!
ビィ
だからきっと大丈夫だって……
オイラはロゼッタを信じる。
ビィ
それにここは、
オイラとグランの
故郷なんだぜ!
ビィ
故郷の危機に立ち上がらねーんじゃ、
騎空士の名が泣くってもんだぜ!
カタリナ
ビィ君……
ドランク
ふふっ……
トカゲちゃんのくせに
カッコイイんだから……
ビィ
ん?
いまなんか言ったか?
ドランク
んーん? 何にも?
それより、ほら!
そう決めたんなら、急がないとね!
ラカム
うしっ!
んじゃ、チビ将軍を引きつけながら、
あの祠まで戻るぞ!
森を駆け、再び祠の前へと集結するグラン
一行。ついにビィは祠を開け、力の封印を解く。刹那の間、ビィは幻を見るが大きな変化は訪れなかった。しかし、ビィは自らに宿った力の存在を確信し、一行は魔晶による暴走を続けるフュリアスに決戦を挑む。
グラン一行は、
改めて祠の前に集結する。
異質な力を前にビィは息を呑むが、
その後ろからは着実に、
破壊の足音が近づいていた。
オイゲン
森に入ってだいぶ距離は稼げたが……
あの将軍サンはまだまだ
ご機嫌ナナメみてぇだなぁ、おい……
ドランク
器の限界も、
まだしばらく先みたいだね~
将軍サマは見た目以上に頑丈みたいだ。
祠の前でグランに
抱き抱えられるビィは、
祠の扉に小さな手をかける。
ルリア
ビィさん……
ビィ
へへっ!
そんな不安そうな顔すんじゃねーや!
オイラまで不安になるじゃねーか!
ビィ
なぁ……
昔、この森で修行してたこと
グラン、覚えてるよな?
ビィ
あん時は、
まさかこんなことになるなんて、
思いもしなかったぜ……
選択肢
覚悟はしてた
ビィ
マジかよ!?
あの頃からそんな覚悟してたなんて、
ちょっとオイラ、信じらんねーぜ……
選択肢
いまも驚いてる
ビィ
だよなっ!
でもまぁ……
島を出てからも楽しかったよな!
ビィ
この島から旅が始まって……
グランと一緒に、
色んな島に行って……
ビィ
でも、この島に帰ってきたとき、
やっぱり懐かしいって感じたんだよな。
ビィ
なんだかよくわかんねーオイラにも、
この村の奴らは優しくしてくれて……
ビィ
だから、オイラも……
この島を……
この村を守りてーって思うんだ!
ビィ
だから……
だから、オイラだって……
オイラだって……!!
ビィが勢いよく祠の扉を開け放つと、
周囲には光が溢れる。
しかし、それは一瞬のことであり、
刹那の幻を見たグランの腕には、
いつも通りのビィが抱かれていた。
ビィ
ん……
ビィ
んはっ!?
オ、オイラ……!?
ルリア
ビィさん……?
カタリナ
ビィ君……
ビィ
オ、オイラ……
いま、あの祠を開けて……
開け放たれた祠の扉は
小さな音を立てて風に揺れる。
イオ
ちょっと大丈夫なの?
何ともない?
ビィ
お、おう……
けど、何か妙な感じが……
カタリナ
そんな!?
や、やはりビィ君は……
ビィ
だあぁぁ!
違うって姐さん!
ビィ
なんかこう……
オイラの中に、
いままで無かった力を感じるんだ……
オルキス
祠の中にいままで感じてた力が無い……
ビィの中に移った……?
ビィ
そ、そうなの……か?
一行が首を傾げていると
木々を薙ぎ倒しながら、
禍々しい巨体が姿を現す。
フュリアス
みぃぃぃつけたぁぁぁぁっ!!
こんなところに隠れてたワケ?
フュリアス
このボクにわざわざ探させるなんて……
あれ?
でもボク、何を探してたんだっけ……?
フュリアス
まぁ、いいや!
いますぐお前らも
ぐちゃぐちゃにしてやるよ!!
ラカム
けっ……
ほんっとーにしつこい野郎だな……
いけそうか? ビィ!
ビィ
ああ!
いまならいけるぜ!
オイラ、なんとなく感じるんだ!
ビィ
いまのオイラは、
いままでのオイラじゃねぇ……
ビィ
でも、オイラはオイラだ!
それは変わらねぇ!
ビィ
だから……守り通してやろうぜ!
この島を……
オイラ達の故郷を!!
ついに魔晶を超え、フュリアスを止めることに成功するグラン
一行。フュリアスは魔晶の影響により、心身に深刻なダメージを受けていた。そこへ再びロキがフェンリルを連れて現れ、満身創痍のフュリアスを回収していく。さらなる敵の影はあるものの、一行はひとまずザンクティンゼルが救われたことに、安堵の息をつくのだった。
三度フュリアスと相まみえた一行は、
ついにその魔晶を超え、
フュリアスに一撃を与える。
フュリアス
ぐが……がはっ!?
ば、馬鹿な……
ふざけんな……!!
フュリアス
な、なんで……!?
くそっ!
ま、魔晶が反応しないだと……!?
フュリアス
げほっ、ごほっ……ぜぇ、ぜぇ……
嘘だ……こんなの嘘だ……
フュリアス
なんで誰も居ないんだよ!?
誰でもいいから、
早くボクを助けろぉぉぉっ!!
カタリナ
…………
ラカム
…………
リーシャ
これが……
魔晶を使った者の末路だというの……?
ロキ
そうだね。
でもまぁ、彼は元々問題があったかな?
フェンリル
ぐるるるる……
イオ
あ、あんた達!?
いつの間に……!?
フュリアス
こ、皇帝陛下……
ロキ
今回は良いものを見せてもらったよ!
この臨場感は、
さすがにお芝居じゃ味わえないよね!
ロキ
やっぱり君達を
おもちゃに選んで正解だったな!
次も楽しみにしてるよ。
ラカム
おい、てめぇ……
次ってのはいったいどういうことだ?
ロキ
教えない……
だって未来を知っているのは、
神様だけで十分だろう?
ロキ
ただ、
そこに倒れてるのは回収させてもらうよ。
まだやりたいことがあるんだ。
ロキ
じゃ、またの機会に……
行くよ、フェンリル。
そう言うと光に包まれ、
ロキはフェンリル、フュリアスと共に
眩い光の中に姿を消した。
オイゲン
……はぁ。
ひとまず、これで島は助かったのか?
ドランク
だねぇ~!
お疲れ様、トカゲちゃん!
ビィ
ああもう……
だからオイラは
トカゲじゃねーっつの!!
幾多の困難に見舞われながら、
なんとか故郷を救った
グラン一行。
そしてビィが新たに自らに感じた力は、
大きな一歩となって、
一行の旅を推し進めるのだった。