ロゼッタによれば、ユグドラシル・マリスよりも先に戦わねばならない星晶獣がいるという。それはロゼッタ自身、星晶獣ローズクイーンだった。ユグドラシルを抑えるため、ロゼッタはユグドラシルと半ば融合したような状態にあり、それを切り離すには戦う以外の方法が無かった。ロゼッタを取り戻すため、そして彼女に認めてもらうため、一行は戦うことを決意する。
ラカム
うし!
んじゃあ、さっそく、
本命と決着をつけに行くとすっか!
ロゼッタ
本命?
じゃあ、アタシは遊びだったのかしら?
悲しいわぁ……
ラカム
おい、こら!
そういう意味じゃねぇっての!
ラカム
決着っつったろ?
ロゼッタも無事だったことだし、
このままユグドラシル・マリスを……
ロゼッタ
ふふ……
大丈夫、わかってるわ。
ロゼッタ
でも……
あの子のところに行くのは、
少し待ってほしいの。
ビィ
んん? なんでだよ?
オイラ達はもう、準備万端だぜ?
ビィ
ロゼッタの言ってた、
ユグドラシルを救う力ってのも、
ちゃんと解放してきたしな!
ロゼッタ
それはアタシも感じるわ……でもね?
貴方達にはあの子の前に、
戦わなくちゃいけない相手がいるの。
カタリナ
なに……?
まさか帝国の手の者が……!?
ロゼッタ
帝国の連中じゃないわ……
貴方達が戦わなくちゃいけない相手は、
……星晶獣よ。
ルリア
ロゼッタさん……
それって……そんな……
どうしてなんですか……?
カタリナ
ルリア……?
ロゼッタ
そう……そうよね。
ルリアちゃんはもう気付いてるわよね。
でもね……仕方のないことなの。
ルリア
でもっ……!
何か他にも方法が……!
ロゼッタ
大丈夫……そう重く捉えないで頂戴。
ちょっとした、
力試しか何かだと思ってくれればいいわ。
ロゼッタ
時にはぶつかり合って、
お互いの力を知ることって、
それはそれで大事なことだと思わない?
オイゲン
おいおい……
話が見えねぇな。
オイゲン
つまりその、
戦わなきゃなんねぇ星晶獣ってのは、
いったい何なんだ?
ロゼッタ
ふふ……それはね?
このアタシよ……
ロゼッタ
星晶獣ローズクイーン……
アタシこそが、いま貴方達が
戦わなくてはならない相手なの。
イオ
そんな……
えと……嘘、よね?
冗談だよね? ロゼッタ……
ルリア
ロゼッタさんの言ってることは、
本当です……
ルリア
いまははっきりわかります……
ロゼッタさんは……星晶獣です。
ラカム
待て待て待て!
仮にロゼッタが
星晶獣だとしても、だ!
ラカム
どうしてそれで、
俺達と戦わなきゃなんねぇんだよ!?
仲間だろ!? 俺達は!
ロゼッタ
アタシの……
星晶獣としての力は、
森と深く関係しているの。
ロゼッタ
だから力を使うために、
まず森や島に
自分自身の根を下ろす必要がある。
ロゼッタ
つまりは契約ね。
そうやって力の範囲を限定することで、
アタシ達は真価を発揮することが出来る。
ロゼッタ
これはあの子……
ユグドラシルも同じなの。
ロゼッタ
そしてアタシはあの子を抑えるため、
あの子と同じこの島に、
自らの力を展開した。
ロゼッタ
結果として、
あの子を抑えることには成功したけど、
一つ、問題が起きちゃったのよね。
カタリナ
問題……とは?
ロゼッタ
いまアタシとあの子は、
融合が進んでるわ……
同じ森を拠点としたことの弊害ね。
ロゼッタ
このままだとアタシまで、
「マリス」に
喰われてしまうかもしれない。
ロゼッタ
だからアタシを一度、
この島から切り離してほしいの……
アタシと戦うことで、ね。
ビィ
嘘だろ……
オイラ達、ロゼッタを助けるために、
ここまで来たってのに……
オルキス
ごめん、なさい……
そもそも私が……
ユグドラシルを起こさなければ……
ロゼッタ
もう……!
皆、そんな暗い顔しないで頂戴。
ロゼッタ
さっきから言ってるでしょう?
力試しだと思えばいい、って……
ロゼッタ
もちろん、
ある程度のダメージは受けるけど、
それでアタシが消えるわけじゃない。
ロゼッタ
それにね? 少し心配でもあるの。
もしここでアタシに負けるようじゃ、
結局、あの子にだって勝てないわ。
ロゼッタ
あの子だって立派な星晶獣よ?
普段は大人しいけど、
やるときはやるんだから……!
ロゼッタ
だから、ね……お願い。
アタシと戦って頂戴。
選択肢
仕方ない
ロゼッタ
そう……
想ってくれるのは嬉しいけど、
やるべきことはやらなくちゃね。
選択肢
やるなら全力
ロゼッタ
あら……
いいわね、好きよ、そういうの……
ロゼッタ
貴方達の全力を頂戴……
アタシが全て受け止めてあげるわ。
ビィ
しょーがねぇ!
そんなに言うなら、
オイラ達も腹括るしかねーよな!
オイゲン
ったく……
星晶獣ってのは、
つくづく難儀なもんだなぁ、おい。
ロゼッタ
そうね……でも、もう慣れちゃった。
慣れてみれば、
これはこれで悪くないものよ。
イオ
あ、あたし頑張って、
痛くないようにするから!
痛くないように、全力で頑張るわ!
ラカム
ま……
見たいってんなら、
やるしかねぇよな……
カタリナ
ああ……
それに油断は出来ないぞ。
ロゼッタ
そうそう……
星晶獣相手に手を抜くなんて、
空にも星にも失礼だもの。
ローズクイーン
全力で……いらっしゃい。
星の獣の矜持を見せてあげる……!!
ルリア
いきましょう! グラン!
皆で頑張って、
ロゼッタさんに認めてもらうんです!
戦いの果てにロゼッタの気配はグラン達のよく知るものに戻る。仲間の帰還に喜ぶ一行。変わらず謎めいた笑みを浮かべるロゼッタと共に、グラン
達はユグドラシル・マリスと戦うべく、歩を進めるのだった。
星晶獣ローズクイーンとの
激戦を制した一行は、
改めてロゼッタと相対する。
ロゼッタ
ふぅ……さすがね、グランさん。
やっぱりアタシの目に
狂いはなかった……
ロゼッタ
いえ……
それよりも、もっと昔から、
決まっていたのかもしれないわね。
ロゼッタは眩しそうに
グランを見つめる。
ルリア
あっ……!
カタリナ
うん?
どうした? ルリア。
ルリア
ロゼッタさんの……
星晶獣の気配がどんどん曖昧になって、
いつもの不思議な気配に……
ロゼッタ
そうね……
それは、無事星晶獣としての力を、
閉じることが出来た、ってことだわ。
ロゼッタ
これでアタシも……
またグランさん達と一緒に、
旅に出ることが出来る……
イオ
うんっ……!
おかえり、ロゼッタ……!
ロゼッタ
ふふ……ただいま。
妖しげな笑みを浮かべ、
ロゼッタは一行の元へと帰還する。
そのいつもと変わらぬ微笑みに、
グラン一行は、
久々の頼もしさを感じるのだった。