グラン
一行は帝都行きの騎空艇に乗るため小さな村へと急ぐ。しかし哨戒中の帝国兵に見つかり尋問を受けてしまう。突然の出来事に面食らうルリア達であったが、ロゼッタのきっぱりとした物言いでこれを切り抜け、警戒心を強めつつ先を急ぐ。
エルステ帝国帝都へ向け、
アガスティア島を進む
グラン一行。
一行は帝都に向かう騎空艇に乗るため、
近くの集落を目指す。
ドランク
さぁって!
ここまで来ればあとちょっとだよん!
ドランク
乗合の騎空艇に乗っちゃえば、
帝都まではひとっ飛びで……
帝国兵1
うん?
なんだ、お前らは……
帝国兵2
近くの村の者か?
こんなところで何をしている?
ルリア
あ……!
え、えと、その……
わ、私達は……
ロゼッタ
アタシ達はしがない騎空団よ。
依頼でこの先の村に、
ちょっと用があるの。
帝国兵1
そうか……
最近は帝都のほうで
妙な動きがあるからな……
帝国兵1
辺境の村とはいえ、
くれぐれも、
面倒事は起こしてくれるなよ。
それだけ言い残すと、
帝国兵達は哨戒を続けるように、
森の奥へと去っていった。
ルリア
はわぁ……
び、びっくりしました……
オイゲン
まぁ、辺境とはいえ、
ここもアガスティアの一部だからな。
兵士ぐらいは居て当然ってか……
オイゲン
こりゃ気が抜けねぇなぁ、おい……
注意して進もうぜ、
グラン……
グラン
一行はついに村へ到着する。しかし、不意にルリアの変装用ヴェールが外れてしまい、正体が露見してしまう。一斉に集結する帝国兵に覚悟を決める一行。帝国兵は新兵器を投入し、一行に挑む。
無事、近くの集落へとたどり着いた
グラン一行。
一行は住人達に、
帝都へと向かう
乗合の騎空艇について尋ねる。
村人
ああ、
帝都までなら、
ちょうどいま出発のがあるけど……
イオ
ええっ!? い、いま!?
急ぎましょ!
ルリア! グラン!
ルリア
あわわ……!
ま、待ってください!
まだドランクさん達が……
村人
待った待った!
兵隊さんが優先だから、
いまからじゃ空きが……
思わず伸ばした村人の手が、
ルリアが身に着けていた
変装用のベールに引っかかる。
ルリア
ひゃっ!?
ルリア
いたた……
あうー……
お尻打っちゃいました……
村人
ああ、ごめんよ!
転ばせるつもりは……
怪我はないかい?
ルリア
あ、はい……大丈夫です。
帝国兵1
おいそこ、どうした?
何を騒いでいる?
帝国兵2
うん……?
その蒼い髪は……まさか!?
ルリア
えっ? あ……
黒騎士
ちっ……マズイな。
グラン達の周囲に、
にわかに帝国兵達が集まり始める。
帝国兵2
貴様ら……
機密の少女と手配犯共だな……?
その蒼い髪が何よりの証拠だ!
ドランク
あっちゃー……
とうとう気づかれちゃった
みたいだねぇ……
スツルム
ふん……
気付かれたからには、
やることは一つだ。
ルリア
うぅ……
ごめんなさい、私のせいで……
イオ
ルリアのせいじゃないわよ!
そもそもルリアが悪いことして
追われてるわけじゃないんだから!
ビィ
とはいえ、
この状況はかなりヤバそうだぜ……
集まった帝国兵達は、
隙間なくグラン達を取り囲む。
帝国兵1
ふん……
俺達をそこらの兵士と
一緒にするなよ……
帝国兵1
おい! あれを持ってこい!
いますぐだ!
黒騎士
ほう……
また何か新しいおもちゃでも、
持ち出してくるつもりか?
帝国兵1
余裕ぶっていられるのも、
いまのうちだぞ……
オイゲン
な、なんだ!?
こりゃ、足音か……!?
帝国兵1
このアガスティアを守る兵達には、
国防のため、
特別な兵器が与えられているのだ!!
帝国兵の言葉を合図にするように、
木々の間から巨大な影が姿を現す。
帝国兵
理由は知らんが、
このアガスティアに来たのが、
運の尽きだったな! 手配犯共め!
イオ
な……なによ、これ……
ロゼッタ
魔晶による変身ではなさそうね……
純粋な兵器、ってとこかしら?
帝国兵
そうだ!
この鋼鉄の鎧こそが、
やがて帝国の主力兵器となる!
帝国兵
貴様らはその栄えある
最初の犠牲者にしてやろう!
帝国の新兵器を撃退するグラン
一行。帝国兵はただちに軍本部へ伝令を向かわせるが、しかし突如現れた帝国軍大将アダムがこれを中止させ、さらにそこに居合わせた兵達を一掃してしまう。困惑する一行を前に、彼はエルステの息の根を止めて欲しいと願い出る。一方グランサイファーでも、予想外の事態が起きているのだった。
帝国兵
く、くそっ!!
やはりまだ実戦での使用は
厳しいか……!?
黒騎士
ふん……
所詮はおもちゃに過ぎんか……
ロゼッタ
むしろ問題は、
そっちじゃないかもしれないわね……
帝国兵1
いますぐ騎空艇を出せ!
帝都の軍本部に応援を要請しろ!
なんとしてもここから逃がすな!
ロゼッタ
彼らをここからひとりでも逃がせば、
もう潜入どころじゃなくなっちゃうわ。
ロゼッタ
むしろ、いますぐにでも、
グランサイファーのところへ
戻らないと……
???
いいえ。
その必要はありません。
黒騎士
貴様っ!?
そうか……
ついに貴様まで出てくるか……
帝国兵1
アダム大将閣下!
いつこちらにいらっしゃったのですか?
アダム
それは問題ではありません。
状況を説明してください。
帝国兵1
はっ!
先ほど機密の少女と
手配犯達に遭遇し、交戦……
帝国兵1
二八式歩兵戦闘車の試作機を
起動させましたが、
手配犯共はこれを突破……
帝国兵1
騎空艇を使い
軍本部へ伝令を飛ばすと共に、
全軍をもって彼らの拘束を……
アダム
状況を確認しました。
騎空艇での伝令に向かった部隊は、
至急こちらに戻してください。
帝国兵1
はっ? はぁ……
大将アダムの命令により、
帝国兵達は慌ただしく動き始める。
イオ
あ、あの人……
大将閣下、って呼ばれてたわよね……
黒騎士
ああ……
奴こそがエルステ帝国軍のトップ、
大将アダムだ。
オイゲン
おいおい……
少将、中将と戦ってきたが、
ついに大将サンのお出ましかい……
黒騎士
いや……
出てきた、というより、
我々が飛び込んだに近い。
黒騎士
奴は基本的に国防を担当し、
滅多なことでは、
アガスティアを離れないからな。
黒騎士
私もあまり接点を持ったことはない……
エルステ王国時代からの、
フリーシアの腹心ということだが……
帝国兵1
大将閣下!
伝令に向かった部隊も、
こちらに集結しました!
アダム
こちらで、
この辺りに居る兵は全てですか?
帝国兵1
はっ!
この区域の全兵力が集まっており、
いつでも総攻撃を仕掛けられます!
アダム
それでは全軍に、
しばしの休暇を与える、と
通達をお願い致します。
帝国兵1
はっ! はぁ……?
大将閣下、それはどういう……
帝国兵1
がふっ!?
自らに敬礼する兵士達に、
大将アダムは目にも止まらぬ速度で
一撃を叩きこんでいく。
数秒後、帝国兵達の全ては、
重なり合って地面に倒れ伏し、
アダムはその中央でひとり佇んでいた。
ドランク
うっそー……
え? え? どゆこと?
スツルム
知るか……
あたしにも、
何が何だかわからない……
黒騎士
アダム、貴様……
どういうつもりだ?
アダム
古くよりエルステを
守護する命を受けたものとして、
私は貴方達にお願いがあります。
アダム
私は貴方達を待っていた……
エルステの歯車が狂い始めたときから、
この時を待ちわびていた……
アダム
エルステの歴史と誇りに代わり、
貴方達にお願い申し上げます。
アダム
どうか……
我らがエルステの息の根を、
貴方達の手で止めていただきたいのです。
一方その頃、グランサイファーの面々は、
謎の小型艇から現れた人物の言葉に、
同じように唖然としているのだった。
カタリナ
なに……?
い、いまなんと……?
???
エルステの息の根を止めてほしい……
そう申し上げたのです。
カタリナ
どういうことだ……?
貴殿はエルステ帝国軍のトップだろう。
それが、なぜ……?
???
私は、確かに
エルステを守護する命を受けたものです。
???
しかし……
私が守るべきエルステは、
もうどこにもない……
???
私は、エルステの最後の誇りとして、
エルステに引導を渡してくれるよう、
貴方達にお願いに来たのです。
小型艇から姿を現した男は、
とうとうと自らの目的を語る。