グラン
達は、エルステ帝国の息の根を止めてほしいという大将アダムの真意を問う。アダムはエルステがまだ王国と呼ばれていた幸福な時代を振り返り、今の帝国が魔晶のせいで怪物に変わりつつあることを嘆く。グラン
達はそれぞれの思惑からアダムの願いを聞き入れ、帝都へ侵入することを決意する。
エルステ帝国軍大将アダムより、
エルステの息の根を止めてほしい、
と告げられるグラン一行。
しかし、その突然の申し出に、
グラン一行は、
状況が飲み込めないでいた。
オイゲン
おいおいおいおい……
またずいぶんと、とんでもないお願いを
してくれるじゃねぇか……
黒騎士
まったく状況が掴めないな……
貴様、何が目的だ?
イオ
エルステの息の根を止めるって……
あの自分で皇帝とか言ってた
ロキって奴を倒せばいいってこと?
ドランク
ねぇねぇ、前から思ってたんだけど、
イオちゃんって、
ときどき考えることが物騒……
ドランク
あいたっ!?
スツルム
これだけわけのわからない状況なのに、
話を脱線させようとするな。
ロゼッタ
でも、一つ事実として……
いま彼は、アタシ達の窮地を救ったわ。
その思惑は別としてね。
ビィ
そりゃ確かにそうだけどよぅ……
あいつにも何か別の目的があるのは、
間違いねぇみてーだぜ?
ルリア
教えてください……
ルリア
貴方がお願いしに来たのは……
私がアガスティアから感じる
嫌な感じと関係はありますか……?
アダム
混乱はもっともです……
私は貴方達に、
全てをお話ししましょう。
アダムは息を整え、
自らの窮状を説明し始める。
アダム
私は、エルステが帝国になるより以前、
エルステ王国の時代より、
エルステに仕えてきたものです。
アダム
かつてエルステ王国は、
優れた技術を持つ、
素晴らしい国でした……
アダム
ラビ島は豊かとは言い難い土地でしたが、
ゴーレム産業で国は潤い、
人々は穏やかに暮らしていました。
アダム
私は夢を見ませんが、
いまでも瞼に浮かぶようです。
守るべき民達の幸せそうな笑顔が……
黒騎士
そんな昔話に興味は無いな。
そんなもの、
星の民が襲来するよりも以前の話だろう。
アダム
はい。
星の民の襲来により、
エルステは没落の一途をたどりました。
アダム
この頃より、
エルステを取り巻く状況は変わりますが、
根幹にあるものは変わりませんでした。
アダム
しかし……
この数年、エルステは魔晶によって、
一つの怪物に姿を変えつつあります。
アダム
そしてその怪物はそう遠くない未来、
自分自身を喰らい始め、
世界を巻き込んで終わりを齎すでしょう。
アダム
私には自らの存在理由ゆえに、
それを止める義務がある。
アダム
しかし……
大きくなり過ぎたそれは、
もはや私には止められない……
ロゼッタ
だからアタシ達に
エルステを倒してほしい……と
そういうわけね?
オイゲン
エルステがおかしなことになってんのは、
薄々わかっちゃあいたが……
オイゲン
こうもハッキリ……
それもエルステのお偉いさん自身から、
潰してくれと言われるたぁな……
黒騎士
アダム……
貴様の考えていることはわかったが……
黒騎士
何故それを我々が成さねばならん?
悪いが私はいま、
自分のことだけで手一杯でな。
黒騎士
ましてや、グラン達にしても、
わざわざエルステのために
動いてやる理由などないだろう?
ビィ
いやまぁ……確かに、
エルステが無くなればそれで、
追われることもなくなるわけだしな……
アダム
ではもし……
いまのエルステと相対することで、
貴方の望むものが手に入るとすれば……
アダム
オルキス王女殿下を
復活させる方法があるとすれば
……如何ですか?
ルリア
そ、それって……
黒騎士さんがずっと探していた……?
黒騎士
ふん……
そう言えば私を釣ることが出来ると、
フリーシアから入れ知恵でもされたか?
アダム
信じるには値しない、と?
黒騎士
信じるに足るものを見せろ。
話はそれからだ。
アダム
では、私に付いて来てください。
私には貴方に
お見せできるものがあります。
ロゼッタ
あら、
どこに連れて行ってくれるのかしら?
アダム
帝都です……
いま、あそこには、
エルステが抱える全てがあります。
そう言うとアダムは、
停泊していた騎空艇の一つに乗り込む。
ビィ
ど、どうする……?
結局まだ、
わかんないことだらけだけどよぅ……
ドランク
いいんじゃない? 付いてって。
帝都に連れてってくれる、
って言うんだしぃ~?
スツルム
賛成だ……
罠なら罠で、
その場で対処すればいい。
オイゲン
危ねぇ道ではあるが、
最初っから、
安全な道でもねぇしなぁ……
イオ
あたし……
あの人の言ってる事にも、
ちょっとだけ興味あるのよね……
ルリア
わからないことは多いけど……
あの人が困ってるのは、
本当だと思います……
黒騎士
ならば決まりだな……
グランもそれで、
構わないな?
選択肢
もちろん
黒騎士
ふん……
貴様は相変わらず、
肝の座った奴だ……
選択肢
ちょっと怖い……
ロゼッタ
ふふ……なぁに? いまさら……
グランはいままでもっと、
危険な状況を切り抜けてきたじゃない。
ロゼッタ
もっと自分を信じてあげないと……
頑張ってきた
いままでの貴方が可哀想よ?
グラン一行は、
アダムの操舵する騎空艇に乗り込む。
こうして一行は思わぬ形で、
帝都への空を進むのだった。
行く手を遮る魔物達を蹴散らしながら、帝都へ向けて進行するグラン
一行。大将アダムの奮闘を目の当たりにした一行は、改めて彼の強さに舌を巻く。しかしアダムは、自分では星の民も魔晶も倒せない、強さや弱さではない別の問題があるのだと語る。
グラン一行は、
大将アダムと共に、
帝都へと向け、アガスティアの空を進む。
魔物
グオオォォッ!!
アダム
はぁぁっ!!
魔物
グオォォ……
ビィ
ひゃー……
初めて会ったときに思ったけど、
兄ちゃんはかなり強いんだな!
アダム
私は私に必要な力しか持ちません。
かなり、と言われましても、
肯定も否定もしかねます。
スツルム
嫌味か……
お前がのした帝国兵達……
あれ、全部峰うちだったろ。
スツルム
あの速度で、
わざわざ殺さないで気絶させるなんて、
並大抵の奴には出来ない。
アダム
そうする必要があったから、
そうしたまでに過ぎません。
アダム
私の役目は、
エルステとその民を守ることです。
兵を傷つけることは出来ません。
スツルム
ふん……
腐ってもエルステ帝国軍大将、
ってことか……
ビィ
なぁなぁ……そんだけつえーなら、
ロキだろうと魔晶だろうと、
自分で倒せるんじゃねーのか?
ビィ
なんだってわざわざ、
オイラ達を頼るんだよ?
アダム
私では星の民や、
その力を模した魔晶を
退けることは出来ません。
アダム
強い、弱い、という問題ではなく、
そういうものなのです。
ビィ
ふぅ~ん……?
そんなもんなのか……?
アダム
はい。
それよりも、
再び魔物が接近しています。
アダム
グラン、武器を構えてください。
迎撃します。