騎空艇グランサイファーで仲間達と合流するグラン。お互いに情報を共有するものの、明らかにアダムの存在が矛盾してしまう。アダムはグラン
一行に対し改めて、エルステ帝国に引導を渡してくれるよう願う。世界の危機を止めるため、一行はその願いに応じるも、未だオルキスを巡り黒騎士との衝突は続く。
帝都アガスティアから距離を取り、
静かな空を進むグランサイファー。
その甲板では、ビィとオイゲンが、
驚きの声をあげていた。
ビィ
おまっ……!
え、あれ?
オ、オイラが何か勘違いしてんのか?
オイゲン
いやぁ……
確かにあの場を
任せてきちまったと思うんだが……
アダム
無事、帝都より脱出なされたようで、
何よりです。
イオ
えっと……どういうこと?
あの後、すぐに帝国から逃げてきたの?
リーシャ
グランさん達はこの方と、
面識があるんですか?
黒騎士
面識があるも何も……
こいつはアガスティアで我々に
全ての事の真相を明かし……
黒騎士
その後、帝国兵から我々を逃がすために、
奴らに捕まったものだと
思っていたのだがな……
アガスティア潜入組と、
グランサイファー待機組は、
それぞれ何があったのかを共有する。
しかし、そんな中で、
明らかに矛盾するひとりの男の存在に、
皆は首をかしげるのだった。
アダム
…………
カタリナ
聞けば聞くほどおかしな状況だな……
カタリナ
彼がグランサイファーを訪ねてきたのは、
アガスティアでグラン達と、
出会った頃のはずなんだが……
ラカム
おいおい……
まさかとは思うけど、
何か企んでんじゃねぇよな……?
イオ
で、でも!
この人、アガスティアで、
あたし達のこと助けてくれたし……
リーシャ
グランさん達の元へ
駆けつけることが出来たのも、
彼が隠し港を教えてくれたからですね。
ビィ
ってぇことは……
一応、敵じゃあねーの……か?
アダム
…………
黒騎士
どうだ?
貴様のほうから何か釈明はあるのか?
アダム
私が貴方達に説明できることは、
あまり多くありません。
アダム
しかし、私が嘘を言うことはありません。
これ以上は、
貴方達が判断することです。
オイゲン
まさかたぁ思うが……
大将サンも星晶獣、ってこたぁ……?
ロゼッタ
その可能性はないわね。
それについてはアタシが保証するわ。
けど……そうね……
ロゼッタはアダムの前に立つと、
その瞳を覗き込む。
ロゼッタ
貴方、言ったわよね?
エルステの歴史と誇りに代わって、
アタシ達にお願いがあるって……
アダム
その通りです。
二言はありません。
ロゼッタ
ふふ……嘘ね、それは。
アダム
…………
ロゼッタ
代わるまでも無く、
貴方こそエルステの歴史と誇り
そのものだわ……そうでしょう?
アダム
それは……私には肯定しかねます。
アダム
私はエルステを
作り上げてきた者ではなく
エルステが作り上げてきたものですから。
アダム
だからこそ私は、
エルステを守らなければならない……
エルステの誇りと、その民を……
アダム
私は私について、
あまり多くを語ることは出来ません。
アダム
しかし、改めて私は貴方達に、
エルステの最期をお任せしたい……
アダム
どうか……貴方達の手で、
エルステ帝国に、
引導を渡していただけないでしょうか。
アダムの言葉に皆一様に静まり返る。
その中で最初に口を開いたのは、
黒き鎧を身にまとった騎士だった。
黒騎士
この際、貴様が
どういった存在であるかについては、
もはや何も問うまい……
黒騎士
しかし、貴様に頼まれるまでもなく、
私はあの女を止める。
どんな手を使ってでもな。
黒騎士
あの女の計画は、
放っておけば帝都の住人だけでなく、
この世界そのものを壊しかねないからな。
カタリナ
まぁ、確かに……
このまま
静観しているわけにはいかないな……
カタリナ
フリーシア宰相のやろうとしている事は、
結果的に空の全てを巻き込む……
カタリナ
この空に生きる以上、
誰一人として傍観者ではいられないさ。
ラカム
だな……
むしろ俺達も巻き込まれちまうってのに、
止めに行かねぇ理由がねぇよ。
イオ
このままじゃ、
世界が大変なことになっちゃうのは、
時間の問題なのよね……
オイゲン
そうさなぁ……
その時間だって、
あとどれだけあるかわかりゃしねぇ……
ロゼッタ
多くないことだけは確かでしょうね。
むしろ今回の大将さんの造反で、
計画を早めるかもしれないわ……
リーシャ
世界の危機が目の前に迫り、
それを止める方法を知っている以上、
無視するわけにはいきませんね。
ビィ
なぁ……
グランはどうする?
選択肢
戦おう
ビィ
おう……
もうそれっきゃねーんだよな……
ビィ
このままじゃ、
放っておいても
大変なことになっちまうんだから……
選択肢
止めよう
ビィ
そうだよな……
全部が始まる前に止めねーと……
ビィ
そうしないとあの帝都の人達が、
みんな犠牲になっちまうんだもんな……
一同がアダムの申し出に覚悟を固める中、
ルリアはひとり、小さく呟いた。
ルリア
黒騎士さんは……
フリーシアさんを止めて……
それで……どうするんですか?
黒騎士
どうする……とは?
ルリア
フリーシアさんを止めて……
それで……その後はやっぱり、
オルキスちゃんを……?
オルキス
ルリア……
イオ
そ、そっか……
黒騎士が欲しい星晶獣は、
いま宰相さんのところにあるのよね……
ルリア
黒騎士さんは……、
オルキスちゃんを
どうするつもりなんですか?
黒騎士
私は……
オルキス
アポロ……
オルキスの視線を感じ、
黒騎士は強く拳を握りしめる。
黒騎士
私は……オルキスを……
彼女を甦らせたい……
黒騎士
彼女の笑顔に……
あの微笑みにまた会いたい……
それだけだ……
オルキス
…………
黒騎士
そのためにお前達と
決別する必要があるのなら……
私は喜んで刃を交えよう。
ルリア
黒騎士さん……
イオ
そんな……!
でも、あの時、オルキスのこと、
大切なものだ、って……
黒騎士
大切には違いないさ……
私の悲願には
欠かすことが出来ないからな。
イオ
そ……そういう意味で、
大切って言ってたの!?
イオ
あの時……
オルキス、嬉しそうにしてたのに……
そんなのって……ッ!!
オルキス
イオ……
黒騎士
…………
カタリナ
私達はどうあっても、
いずれ決着を付けねばならないのか……
リーシャ
で、でも、いまはひとまず、
どうやってフリーシア宰相を
止めるかを考えませんか?
リーシャ
ここで争って
時間切れになってしまっては、
元も子もないですし……
ラカム
ああ……
まずは目の前の問題が優先だ。
ラカム
ってこたぁ……
向かう先はアガスティアだな?
さっき逃げてきたばっかだけどよ。
リーシャ
帝国軍の哨戒の範囲も、
広くなっているかもしれません……
リーシャ
魔物以外にも、
戦艦にも注意して、
慎重に進んでいきましょう。
黒騎士
…………
オルキス
…………