「タワー」の中で大勢の帝国兵が倒れているのを発見したグラン
達は「リアクター」が原因だと察し、フリーシアを止めようと先を急ぐ。しかし、そんな一行の前に中将ガンダルヴァが立ち塞がる。仲間を先に進ませるため、最強にこだわるガンダルヴァとの因縁に決着をつけるため、リーシャとカタリナがガンダルヴァと刃を交える。
一度、アガスティア市街で
グラン一行と
激突したガンダルヴァ。
その後、
ガンダルヴァは再び一行を迎え撃つべく、
「タワー」内部に身を潜めていた。
ガンダルヴァ
…………
虚空を斬る刃の軌跡を睨み、
ガンダルヴァは
かつての勝負に想いを馳せる。
リーシャ
もう仲間を傷つけさせたりしない……
私が……この場で、お前を倒す!!
リーシャ
やろう……グラン。
私はもう絶対に逃げない……
絶対に……負けたりしない!!
ビィ
ふんだ!
二人同時だろうと、
いまさら怖くなんかねーぜ!
ルリア
はい!
さっきまでと違って、
いまはみんながいます……
ルリア
いきましょう!
グラン!
みんな一緒なら、きっと大丈夫です!
ガンダルヴァ
…………
帝国兵
ガ、ガンダルヴァ中将閣下!
い、急ぎお耳に
お入れしたいことが……!
ガンダルヴァは剣を鞘に戻し、
帝国兵へと振り返る。
ガンダルヴァ
言え……何があった?
帝国兵
はぁ……はぁ……
れ、例の連中がついにタワー内部まで、
侵入してきたようでして……
ガンダルヴァ
ふん、そうか……まぁ、そう慌てんな。
元々、時間の問題だったじゃねぇか。
帝国兵
い、いえ……!
それがその……
他にも不可解な事態が……
ガンダルヴァ
他にも……?
別の侵入者がいるってのか?
帝国兵
いえ……
それは定かではないのですが……
帝国兵
タワーを含む帝都全体が
攻撃を受けているのではないか、と
各地点より報告があがっております……
ガンダルヴァ
攻撃を、
『受けているのではないか』……?
煮え切らねぇな……どういうことだ?
帝国兵
はぁ、それが……
兵士や民間人に、原因不明の体調不良を
訴える者が続出しておりまして……
帝国兵
数は徐々に増加しており、
昏睡状態に陥っている者も
少なくありません……
ガンダルヴァ
例の騎空団の連中の手助けに、
秩序の騎空団やら、バルツ公国やらが、
動いてるって話じゃねぇか……
ガンダルヴァ
民間人も見境なしたぁ、
連中にしては、
思い切ったことを始めやがったな。
帝国兵
はぁ……はぁ……そ、それが……
秩序の騎空団や、バルツ公国軍にまで
被害が及んでいるようでして……
帝国兵
さ、さらに被害状況の分布を見るに、
このタワーが被害の中心に在り、
何らかの……原因、なのでは……
ガンダルヴァ
っ!?
ガンダルヴァは瞬時に
意識を失った帝国兵の背後にまわり、
崩れ落ちるその背を支える。
ガンダルヴァ
はん……
こういうことか……
帝国兵を床に横たえ、
立ち上がるガンダルヴァの手には、
自らの愛刀があった。
ガンダルヴァ
間の悪いことだが……
ま、やることに変わりはねぇな。
ガンダルヴァは扉を開け、
タワー内部の通路へと出る。
その先ではいままさにグラン達が、
フリーシアの野望を止めるべく
奔走しているのだった。
グラン一行は、
暴走状態のフュリアスを退け、
タワー内部を進む。
しかし、タワーを進むにつれ、
グラン一行は、
思わぬ光景に遭遇していた。
カタリナ
これが……
フリーシア宰相の望んでいる
事態だというのか……
黒騎士
いや……
これ自体には何の感想もあるまい。
奴の目的は、このさらに先にある。
黒騎士
そしてそれは……
引き起こされてしまったが最後、
こうして眺めることも出来はしない。
そう言って黒騎士は
憐れみと決意の篭った視線で
自らの足元を見やる。
グラン一行が進む
タワーの内部には、
大量の帝国兵達が倒れ伏していた。
オルキス
みんな……眠ってる?
リーシャ
明らかな異常事態ですね……
「リアクター」の影響であることは、
まず間違いないと思いますが……
ラカム
外の騒ぎに比べて、
この中はやけに静かだと思ったが……
まさかこんなことになってるとはな。
イオ
ねぇ、これ……
あたし達見たわよね?
あの人に連れてかれて……
ルリア
はい……
アダムさんが案内してくれた場所に
居た人達と、すごく似てます……
オイゲン
ありゃあ全部、
「リアクター」を作る過程の
被験者っつう話だったな……
ロゼッタ
つまり「リアクター」は、
実験通り順調に稼働してるみたいね。
黒騎士
我々が「リアクター」を……
フリーシアを止めることに失敗すれば、
じきに帝都全体がこうなる。
オイゲン
いやぁ……
それだけじゃあ、すまねぇさ……
ビィ
うう……そうだよな。
帝都がこんな風に
なっちまうってことは……
ビィ
例の星晶獣……
アーカーシャが動き出しちまう、
ってことなんだもんな……
オルキス
そうなったら、もう……
何が起こるか……わからない。
ルリア
それだけは……
絶対に……
ルリア
っ!?
グラン達以外に動く者の無い
タワーに響く足音に、
皆一斉に振り返る。
そうして振り返った
皆の視線の先に居たのは、
軍服に身を包んだひとりの男だった。
ガンダルヴァ
よう……
何を立ち止まってやがる?
ついさっきまでの勢いはどうしたよ?
カタリナ
ガンダルヴァ……!
あの後、
タワーに先回りしていたのか……!
ガンダルヴァ
ったく……
いよいよこんなとこまで
来やがってよ……
ガンダルヴァ
これじゃ帝国のメンツってもんが……
いや、もうそういう話でもねぇか。
ラカム
また厄介な奴が出てきたな……
リーシャ
はい……
しかし、いまの私達の目的は、
あくまで「リアクター」です。
リーシャ
正面からぶつかるのではなく、
ここは撒いて
「リアクター」の探索を……
ガンダルヴァ
おいおい……そう焦るなよ。
オレ様はお前らに用があって、
わざわざ出てきたんだからよ。
イオ
焦るに決まってるじゃない!
だって急がないと、世界が
大変なことになっちゃうんだから!
ガンダルヴァ
はん……
それがどうした?
イオ
はぁ!?
ガンダルヴァ
いいんだよ、いまは……
……そんなことはな。
イオ
そ、そんなことって……
オイゲン
おいおい……
そこまで言うってんなら、
何が目的か教えてもらおうじゃねぇか。
ガンダルヴァ
それは構わねぇが……
その前に一つ、答えてもらうぜ?
そう言ってガンダルヴァは、
自らの愛刀で倒れ伏す帝国兵達を示す。
ガンダルヴァ
これ……やったのはお前らか?
カタリナ
いや……
いまさら貴殿を相手に潔白を主張しても、
あまり意味はないかもしれないが……
カタリナ
私達も驚いていたところなんだ……
恐らくはフリーシア宰相の、
「リアクター」が原因だろう。
ガンダルヴァ
はん……
またあの女は
面倒なことを考えてるわけか……
黒騎士
我々はあの女を止めに行く。
その邪魔はしないでもらおうか。
ガンダルヴァ
悪ぃなぁ!
邪魔するつもりはねぇんだが、
オレ様にも優先順位ってものがあるんだ。
黒騎士
優先順位だと……?
ガンダルヴァ
ああ……
この世界よりも、あの女の企みよりも、
オレ様には大事なもんがある……
ガンダルヴァ
それはな……
このオレ様が、最強であることだ。
リーシャ
…………
イオ
さ、最強って……
そんな……
ガンダルヴァ
笑っちまうか?
笑っちまうよなぁ!
まったくその通りだ……!
イオ
え?
そ、そんなつもりじゃ……
ガンダルヴァ
いまのオレ様は最強には程遠い……
お前らみてぇなガキにまで
脅かされる始末だ……
ガンダルヴァ
このままじゃあいられねぇんだよ。
だから……
ガンダルヴァは愛刀を掲げ、
グラン達を睨む。
ガンダルヴァ
決着、つけようぜ。
これが全てで、これが最後だ。
リーシャ
…………
黒騎士
付き合いきれんな……
悪いが我々は、
最強など心底興味は無い。
ガンダルヴァ
だからオレ様を無視して、
先に進むってか?
ガンダルヴァ
背中から獲物を斬るのは
好みじゃねぇが……
出来ないわけじゃねぇんだぜ?
黒騎士
貴様……!
リーシャ
……わかりました。
ここは私が引き受けます。
ルリア
リーシャさん……?
リーシャは、
ガンダルヴァの方へ一歩を踏み出すと、
グラン一行に背を見せる。
リーシャ
この場は私に任せて、
皆さんは先に進んでください。
ビィ
お、おい、待てって!
ひとりであいつと戦うつもりかよ!?
リーシャ
「リアクター」を止めるためには、
少しでも多くの人手が必要なはずです。
リーシャ
それに……
この仇が生まれた理由は、
私と……私の父さんにあります。
リーシャ
だから私だけはこの勝負から、
決して逃げるわけにはいきません。
ガンダルヴァ
そこまでわかってんなら話は早ぇ……
もう御託は十分だよな……?
ここからはこいつで話をしようや……!
そう言ってガンダルヴァは刃を抜き、
リーシャもまた剣を構える。
両者の緊張が高まる中、
しかし、最初に動いたのは、
思わぬ人物だった。
カタリナ
まったく……
少しは変わったと思っていたのだが……
そう言うとカタリナは、
自らの掌をリーシャの頭に乗せる。
リーシャ
えっ……?
カタリナ
どんな理由があろうと、
ひとりで背負い込もうとするんじゃない。
カタリナ
こんなことをしては、
秩序の騎空団で私達と対峙していた頃と、
何も変わらないぞ?
リーシャ
で、でも……!
カタリナ
確かに人手は必要だが……
ここには私も残ろう。
構わないな? グラン。
選択肢
リーシャをよろしく
カタリナ
ああ……
必ずリーシャ殿と一緒に
すぐに追いつこう。
カタリナ
その間……
ルリアを頼んだぞ、グラン……
選択肢
仕方がないよね
カタリナ
ああ……「リアクター」を止めるため、
少しでも人手が必要なのは
間違いないが……
カタリナ
かと言って、
この状況で奴と一対一で戦おうなど、
いくらなんでも無謀すぎる。
ガンダルヴァ
こいつは……
予想以上に面白くなりそうじゃねぇか。
ルリア
カタリナ……
カタリナ
大丈夫だ、ルリア……
何も心配することはない。
そうだろう? リーシャ殿?
リーシャ
は、はいっ!
私とカタリナさんなら、
きっと大丈夫です!
ルリア
でも……
カタリナ
さぁ、行くんだ……
これ以上は時間をかけられない。
カタリナ
それにルリア……
君の力はここではない場面で、
必ず必要になってくる。
カタリナ
だからこの場は私達に任せて、
先にグラン達と
一緒に進むんだ。
ビィ
い、行くしかねぇよな……
リーシャ! 姐さん!
絶対、追いついて来てくれよな!
リーシャ
はい! 必ず!
カタリナ
ふふ、約束しよう……
こうして、
リーシャとカタリナをその場に残し、
グラン一行は先へ進む。
カタリナは
姿が見えなくなるまで一行を見送り、
改めてガンダルヴァへと向き直る。
カタリナ
さて……
それでは早々に決着をつけようか、
ガンダルヴァ中将……
リーシャ
私達にはまだやることがあるんです……
あまり長くここに留まるわけには
いきません!
ガンダルヴァ
はん……
それならそれでオレ様も構わねぇさ……
ガンダルヴァ
さっそく返してもらうぜ……
このオレの……最強を!
ガンダルヴァ
オレはお前らを倒して、
最強のオレを取り戻す……
これがその最初の一戦だ!!